マーケティング


倉本聰だったか山田太一だったかが、今のTVドラマの現状を嘆いて、


「近頃のドラマ作りはマーケティングがまずあって、視聴者受けする企画を持ち上げるところから始まる。本来なら脚本家がこんなホンを書きたい、こういうものを世間に問うてみたい、と言うところから始まるべきである。プロの脚本家と言うのはそういうものが書なければならない」


という趣旨のことを書いていたのを見たことがあります。


料理の世界でも同じです。


今のトレンドは何か、どの客層に購買力があって、その客層に受けるべき店作りはどうあるべきか、客単価の設定は、メニューの構成は。。。。。


流行の「和ダイニング」、「居酒屋以上割烹未満」はますます増え、新しくできる店は20代半ばから30代後半くらいが気軽によれるばかり。。。。。


企業の目的は利潤を得ることであるという大原則から見れば、マーケティングが先行することは全く正しいことであるのですが、マーケティングを専攻した板前はこのシステムに偏ることが生理的に嫌いです。


今自分自身が何を美味しいと思うか、この素材の持ち味を一皿に凝縮したい、と思う心が先行し、「こんなのが美味しいと思うのですが」お客様に提供できることが、店作りの基本でありたいのです。


単価設定から素材とメニューをひねり出すことからは、私が美味しいと思うものは決して出来上がりません。客単価や原価計算を無視するのはプロのすることではありませんが、「まず値段ありにき」「まず利潤追求ありき」にはなりたくありません。


親が苦労して学問を学ばせたというのに、こんな職人になってしまった私。きっと草葉の陰で嘆いているのでしょうねぇ。