お酒の先生にはならない


お客様のお話


「東京の某所で○○の大吟醸をのんでねぇ。味があんまり落ちたって感じたものだから、大将に言ったんだよ。”あっ、スミマセン。封切から一週間たっていますから。今新しいのを。。。”って出してもらったんだけど、やっぱりあんまりよくなかったなぁ」と。


○○の大吟醸は以前には私ン処でもよく使っていたお酒でしたが、冷温管理がしっかりしていれば少々でへこたれる酒質ではないという印象です。むしろ開栓後少々してからのほうが味がやわらかくなると思っています。


私なら二ー三週間かけて使い続けても酒質が落ちるとは思えないタイプです。


この「大将」の商売が上手なのか、温度管理に問題があったのか。(多分ないと思う)


以前にも書きましたが、日本酒の新鮮信奉は未だ根強いものがあります。封切が一番美味しい。開栓したら即飲まなければならない。空気に触れれば触れるほどまずくなる。


思い込んだ方の誤解を揉みほぐすには時間がかかります。酒通を自認する方ばかりのゆえに尚更です。


開栓して一週間以上のすべてのお酒がだめになるようなら、私ン処のお酒はみんなかなりヤバイ。


熟成したワインが抜栓後に味が変化するのと同じ論法を、そのままあらゆる日本酒に当てはめるわけにはいきません。


もちろん酵母酒米、火入れの有無、濾過の仕方で酒質と保存、味の変化の仕方は様々ではあるのですが、概して日本酒というのは力強いものです。


心ある酒屋さんと様々な試みをしていることが結果を出すにも時間がかかりますが、日本酒の「熟成」を認知していただくのは、「辛口信奉」を突き崩す以上に長い道のりになりそうです。


とは言いつつ、日本酒の美味さはこうあるべきである・・・・みたいな頑なな頭を持ってしまうと、「私、教えてあげる人」「お客様、教わる人」のような先生になりたくなる可能性があります。


これこそが一番の落とし穴。


料理屋や酒屋は先生ではなくて、楽しんでいただくためのお客様の僕でなくてはなりません。(先生として収まるのが上手な方もいらっしゃいますが)


頑固なお客様を相手にするときこそ柔軟な姿勢を・・・・ってのができないんだな、これが。


未熟者だから。すぐに熱くなっちゃう。