誰が選ぶか
日記だけをご覧になっている方は、「弁いちというのは高価なお酒しか置いていないのではないか?」と思われるかもしれません。
確かに話題にするお酒はどちらかと言うと稀少で高価なものが多いのですが、実際に店で扱われるお酒はそういうものばかりではありません。
お客様には予算があり、それぞれのお客様が納得する値段と言うものがあります。
日本酒のラインアップを決めるときに、どの蔵のどの値段のどのタイプのものを選ぶかと言う基準はとても難しくて、料理との相性とか、お酒のメニューの値段と味の全体の構成とか、蔵の力がもっともよく現れているタイプであるとか・・・・込み入ったパズルを解くような気持ちになります。
で、
最終的に「この酒」と自分自身の舌で自信を持って決めても、いざ現場でお客様に提供するとお客受けがイマイチというお酒があります。
この値段でこれだけ美味しいのに何でだろう?
と、不思議でならないのですが、お客様から「おお!」というい言葉は聞けません。
「おお!」を聞きたい私としては悔しくてなりません。
押しなべて(あくまで押しなべてですが)いうと、お手ごろな価格帯のものにはこの「おお!」が少ないことも事実です。
私としては値段がこなれていて美味しいお酒の選び方は特に慎重で、選びに選んだつもりではあるのですが、お客様に納得していただけなければ意味がありません。
なにもおっしゃいませんが「このお酒はお前ン処で飲むもんじゃないよ」と暗に言われているような気がします。
同じことは値段の高い、稀少なお酒でも言えます。
どれほど手に入りにくくて一般の評価が高いお酒でも、私ン処のお客様が「うん」と言わなければラインアップからはずさざるを得ません。
お酒は自分の舌で選ぶ・・・・を基本にはしているのですが、結局お客様が選んでいるのですね。
それくらいの柔軟性はあるつもりではあるのですが・・・・「俺の選んだ酒が気に入らんのか」・・・・というような偏屈オヤジにはなりたくないものです。