ダブルマグナム


お客様ももうそろそろお帰りになる頃、お得意様からお電話をいただきました。


「今仕事場の新年会で面白いワインを開けたから持って行ってあげるよ」


持って行ってあげるよ・・・・って言ったって掛川からです。磐田、袋井と二つの市をまたいでタクシーでわざわざ・・・・申し訳ないような。


で、
抱えてきてくださったのが、なんとシャトー・ラフィット・ロートシルト1969 ダブルマグナム。


ダブルマグナムというのは3000ml、つまりレギュラーボトル4本分の超デカサイズのことです。


ダブルマグナムなんていう貴重品を飲んだことはもちろん一度もありません。しかもラフィットです。


世界中のワイン愛好家が愛して止まないラフィットです。


フランス、ボルドーには公認される五つの最上級のシャトーがあります。


シャトー・ラトゥール、シャトー・ラフィット・ロートシルトシャトー・マルゴー、シャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・オー・ブリオン


ワインを全く知らないという方もこの中の一つくらいは名前を聞いたことがあるかしれないというほどの最上級ワインです。


もし死ぬ前にこの五つシャトーの中から一つだけ飲ませてくれるといわれたら、私は間違いなくラフィットを選びます。数は少なくても(高価ですから)いままで飲んだことのあるラフィットは、どれも優雅で力強く洗礼された素晴らしいワインなのです。


そのラフィットのダブルマグナムなどというワインは見たことさえありませんでした。


実を言うと、ワイン評論家 ロバート・パーカー氏の言うところでは、1969年というのはボルドーワインにとっては散々な年のようで、二級クラスでさえもう飲むに耐えるワインは存在しないのではないかというほどらしいのです。もちろん私は1969年のワインを他で飲んだことがありませんのでよくわかりませんが。


ラフィットやラトゥールという力強いワインでさえ高い得点が得られないほどのヴィンテージなのに、いただいたダブルマグナムは違いました。素晴らしく美味しいのです。


レギュラー・ボトルとマグナム、ダブルマグナムの熟成具合の違いをを見事に表わしているのだと思います。だからこそ、世界で最も見識高いラフィットというシャトーは、1969年のワインをダブルマグナムで残しておいたのでしょうか?


1969年のダブルマグナム・ラフィットは、ただ美味しいワインをいただいたというだけでなく、ラフィットという偉大なワインの歴史を垣間見せていただいたという幸せな経験でした。


そしてなにより、こんなワインをわざわざ「あいつに飲ませてやろう」とタクシーで駆けつけてくださるお得意様をもてたことに感謝、ひたすら感謝。