充分美味しい


昨日の続き


日本酒にも同じような言い方があります。ただ、日本酒の場合は熟成を経なければ飲めない、というわけではありませんので、「充分美味しい」という言い方になります。


この数年の日本酒の傾向は、経済状況の影響もあってか、お手頃で美味しいものに集中しています。


特に、2000円台半ばくらいから4000円までの価格帯でコストパーフォーマンスに優れたお酒を造ること、売ることの競争は激しいものです。


例えば、「十四代 本丸」「飛露喜 特別純米無濾過生原酒」「王禄 純米吟醸」など2000石以下の小さな蔵が、値段からするとかなり内容の高いお酒を世の中に出してきています。


そして、今は次の十四代を狙う蔵が続出です。下手をすると一ヶ月に何本も試飲をしたりします。


その中から「これは!」と思うものを店のラインアップに加えることがあるのですが、私ン処のお客様にいざお出ししてみると、自分の思った「これは!」が「これでいいの?」になってしまうことがよくあります。


もともと値段だけを見ると、この価格帯のものを望んでいるお客様は少ないと言うこともあるのですが、値段以上に味的に日本酒についてはお客様はワイン以上に厳しいのです。


「お前ン処へ来て、このくらいのお酒を飲みたいとは思っていないよ」というのが見えてしまうのです。


私にしてみると、値段からすると充分すぎるくらい美味しい・・・・のですが、お客様の評価はいわば「ハレ」の場所に来た時には、「充分美味しい」ではなくて「ウムを言わさず美味しい」そう納得できるお酒を出して欲しいという思いがあるのでしょう。


もちろん「高ければいい」では絶対にありませんが、値段を超えたところでの厳しい評価には全く恐ろしいものがあるのです。


それもやりがいのひとつではあるのですが。