充分の飲める
よくソムリエさんや、酒屋さん、料理屋などの間で、若いワインを試飲したとき、「充分飲める」という言葉を使います。
本来はたっぷり熟成させた後の方が美味しくなることはわかっているのですが、今飲んでもちゃんとそれなりに若さが美味しい・・・・とでも言うのでしょうか。
早めに開ければとか、デキャンターすればとか、時間をかけて飲めばという言葉が必ず添えられます。
90年代半ばから多くのボルドーやブルゴーニュのワインも若くて飲みやすい造り方に変わってきました。昔風の7年10年とセラーでじっくり熟成させなければ美味しさが現われてこないというワインでは売れなくなってきているからです。それでもやっぱりきちんと熟成させたほうが美味しいに決まっています。
普通のフレンチ・レストランではボルドーワインでも1995年以降のものが当たり前にリストに並んでいます。いわゆる「充分飲める」クラスです。1980年代のものは今買おうと思うと、1997年以降のものの二倍から三倍しても仕方のない値段がしますから簡単に買い込めないのが実情です。フランス料理のソースとの相性ですから「充分飲める」でいいのですが、そりゃさらに美味しいのは正しく熟成させた1980年代以前のものです。
私ン処のお客様は「充分飲める」ではなかなか許してくれません。価格との関係もあってすべてのワインが完璧な熟成ではないのですが、コスト・パーフォーマンス以上に確かな味に厳しいお客様に恵まれているというのは、ある意味ありがたいことです。