感性の錆つき


MISIAの”KISS IN THE SKY”の中から「眠れぬ夜は君のせい」を聞きました。


TVで頻繁に耳する歌もアルバムの中で聞けば、音つくりの緻密さと迫力が違うのが当たり前ですから期待していたのです。


彼女の歌の良し悪しはあまり興味がないのでさておき、アレンジが気持ち悪く感じて驚きました。最初に聞いたときには、てっきりすべてのバックの音が「打ちこみ」によるものだと思ったのです。


シンセザイザーの音やコンピューターの打ちこみ、サンプリングによる音つくりを否定するつもりは全くありません。


よく聞く山下達郎のアルバムでは「このベース音は稲葉国光さんの生音(なまおと)に違いない」と思ってクレジットを見ると打ちこみだったり、「今回も青山〜伊藤のリズムは切れがいいぞ」と感心したら、その曲はやっぱり打ちこみであったりしたことでさえもう十年も前のお話。


スマップの曲でもバックのアルペジオシンセサイザーだからこそカッコイイというのがあります。


程度の高いアレンジメントと音造りでは、そのアルバムと曲に生の楽器を使うか、電気的に処理した音を使うかといのは選択の問題であって、生の楽器こそが最上と言うのは幻想だと思っています。それほどに今の音楽つくり上のミキシングやプログラミングの技術は進んでいます。


ただ、MISIAの曲ではすべて打ちこみと思ったバックはベースもストリングスも楽器を使っていたのです。山下達郎の時に抱いた驚きはすでに逆になっていました。


ベースの音はシンセサイザーのようなビート感で、ストリングスもサンプリングで作り上げたように無機質で厚みのない音です。せっかく楽器を使っているのにデジタル処理をしすぎてしまって、音がロボットのようにカチカチして広がりを感じさせません。歌い上げる歌にあのバックではカラオケで歌わせているようです。


それがプロデューサーの意図だとしたら恐ろしい。


世間では大ヒットし、皆に「いい曲」として受け入れられ、カラオケでもきっと大人気曲でしょう。


そんな音つくりが私には気持ち悪いというのは、私の感性が錆びついてしまってきているせいかもしれません。


もしかすると、プロデューサーは最初からカラオケヒット曲ねらいで、あのカラオケ的バック音が一般聴衆に違和感を感じさせないように仕掛けてあるのかも?若い世代の”My Way”ねらいか?


いや、そこまで勘ぐらなくても、やっぱり単純に私の感性の問題でしょうね。