お客様さまざま
いつもご夫婦で素敵なセンスのお得意様。
ワイン好きの奥様に、「試飲をしたいワインがありますので、よろしければいかがですか?」とお得意さまでなければ申し上げられないお願いをしてアラン・ミュショロのニュイ・サンジョルジュを飲んでいただきました。
予想以上にいい熟成具合で「いい香りですねぇ」とたっぷり召し上がっていただきました。
「こんな飲んじゃったんでしっかり値段とってくださいね」とおっしゃってくださって、それなりに値段をつけたのですが許してくださいません。
「これじゃ安すぎます。困っちゃいますから」とご祝儀をたくさん頂戴してしまいました。
本当はかなりのお得な値段で仕入れたもので、「仕入れ上手なだけですから」と笑って申し上げたのですが申し訳ないような。
ご接待でお見えいただいたあるお客様。
「こちらのお店は接待先に地図をお送りしなくてもほとんどの方がわかる、唯一の店なんですよねぇ」と、お帰りの際におっしゃってくださいました。
「弁いち?どこのあるのそれ?」と80年もやっている割には知名度がないと思いつづけている私には嬉しいお言葉。どうやらある特定業種のお客様への知名度だけは高いようです。
もう一組のご接待のお客様。
「看板が小さくて探しちゃいましたよ」
ただでさえ小さな看板が大きくしげった柿の木のためにさらに見難くなっていました。
一度ご来店いただいたら忘れられない・・・・というのが理想的ではあります。まったくお客様はさまざまです。
もう一人のお客様、いえ客とはいえないかもしれません。大きな失態。
予約のお客様が見える頃、どこかでいっぱい引っ掛けてきたと見える中年男性が一人で玄関に入ってきました。「いっぱい飲ませてくれよ」と。
満席でしたので、「あいにくご予約でいっぱいでして」とお断わりすると、
「そりゃぁおかしいなぁ。この店はお客を選ぶのか」と予約席のカウンターに座り込んでしまいました。
最初のうちは穏やかにお引取りを願うようにお話してたのですが、訳のわからないずっと言っているものですから、プッツンと切れてつまみ出すようにたたき出してしまいました。
長く商売をしていてこんな経験は初めてです。大声を出したのも二十年ぶりくらい。
店先で大声をあげてしまったものですから、ご近所さんが何事かと覗き込む始末で恥ずかしい思いをしました。
お酒を売る商売をしていておかしな話ですが、この手の酔っ払いが大っ嫌いです。こういうお客も相手にしなくてはいけない、一見のためのカウンター席を持つお店は苦労してるんでしょうねぇ。
タチが悪い酔っ払い追っ払うこと自体始めて、という私ン処はかなり恵まれているのでしょうか。