化学調味料


日本料理に化学調味料を多様するのは邪道だ、といわれながら、早くから化学調味料を使っていること(多様ではなく)公言していたのが名料亭「吉兆」の湯木貞一さんであったそうです。


とはいっても20数年年も前の話、料理業界を取り巻く環境は大きく変化していますから、そのまま今の状況にあてはめることは出来ません。まっ、湯木さんの柔軟な姿勢を物語る逸話として語れたのだと思います。


それでも私など、20年前はその言葉を支えに、というわけではないのですが、化学調味料を結構頻繁に使っていました。


自分の料理への自信のなさ故なわけで、濃厚なしっかりした出汁の味のために四苦八苦していたのです。


ところが、年月を経てそれなりの経験をを積んでくると、この素材にはこういう濃度の出汁、この素材にはほとんど水に近いような濃度の出汁、この素材には、出汁でなく煮切り、・・・・・などとそれぞれの素材にあわせた出汁のバリエーションが自然に身についてきたような気がします。


もちろんその間に素材への関心が高まり、素材の持つ力に傾倒していった自分がいるのですが、それでも、そういう経験の流れの中で自然に化学調味料からは離れていきました。


今では、一週間に一つまみ程度・・・・の使用量でしょうか。


依然として、化学調味料を使うことにためらいは何もないのですが、使わなくてもいい素材に恵まれているということなのかもしれません。


お得意様に「化学調味料なしでこの出汁の味になるんですよね」という嬉しいお言葉を頂いて、そういえばなるほど今は使っていないな、と改めて振り返ってしまいました。