素朴さを味わう


お客様からサトウキビのシャーベットを頂戴しました。


奄美大島からのお土産です。


遠い南の島からシャーベットが届いてしまうというのも驚きです。流通革命の時代では不思議でもなんでもないのでしょうが、いつまでもアナログ感覚な私には、未だに暑い国から凍ったものが到着すると言うのは理解できないところがあります。


そのシャーベットというのはただ単純にサトウキビのジュースを凍らせただけのものです。我々がやるように何度も撹拌させたり、アイスクリームメーカーに入れて滑らかな舌ざわりにして・・・・というものではありませし、糖度が何%だからボーメ何度の砂糖を混ぜてとか酸味を加えてと言うものでもありません。


ただじゃりじゃりとしたシャーベットには自然なほんのりとした甘味があって、後味には黒砂糖の香りが余韻として残ります。サトウキビそのものの味以外にないも加えていないことがストレートに舌に伝わり、自然が与えてくれた恵みそのものを感じることが出来ます。


素朴な甘味というのが一番ぴったりくる美味しさです。


こういうのはクーラーの効いた所で食べるのではなくて、炎天下の日差しの下で喉を潤すためにあるのでしょう。


私が幼い頃、庶民が食べるものは素朴なものでした。その反発ではないのですが、高級なもの上品なものへの憧れが強く、目指すものはそういう志向になっていきました。


ところが今世の中を見渡すと、庶民が口にするものはコンビニや冷凍食品、養殖ものに代表されるように添加物、大量生産、人工物に満ちてしまっています。それに慣れ親しんだ若い世代には、サトウキビシャーベットのような素朴な美味しさを理解できる舌が育まれていません。


「昔はよかった」的な安易な懐古趣味でなく、単純で素朴な自然の恵みについて考えて見たいものです。サトウキビのシャーベットが教えてくれそうです。