名演その12〜もうひとつのチェニジアの夜


昨日お話したジャズの名曲「チェニジアの夜」にはもうひとつのヴォーカル盤名演があります。


曲名もまさしく”ANOTHER NIGHT IN TUNISIA”


THE MANHATTAN TRANSFER ”VOCALESE”という1985年の傑作アルバムの中に収められています。


今若者の間で流行りのアカペラ。ボビー・マクファーリンが驚異的なヴォイスコントロールと音程、ボディー・パーカッション(身体を叩いてリズムを刻む)リズム低音部を一人でこなし、マンハッタン・トランスファーの四人が歌います。


さらに、昨日も話題にした1946年のチャーリー・パーカーの歴史的なソロ部分をランバート・ヘンドリクス・アンド・ロスのジョー・ヘンドリックスがものすごいスピードでドライブして歌うのです。


この演奏には打ちのめされます。世界中の誰も真似できない演奏です。


”ANOTHER NIGHT IN TUNISIA”が”ONE AND ONLY NIGHT IN TUNISIA”になり、1946年の歴史的な名演が、1985年に再び歴史的演奏になったといっていいでしょう。


アカペラに興味をもつ若者たちはこういう演奏に目は行かないのでしょうか。聞くところによると、もっぱらアイドルは「ゴスペラーズ」だとか。「TAKE6」(アメリカのヴォーカルグループ)にさえ興味がむかないのだそうです。


日本語だから理解しやすいのが理由だというのですが、志があまりにも低い(ゴスペラーズ批判ではありません)大リーグが目の前にあるのに「巨人こそ最上の目標です」といっているようなものです。皆好きだから僕も好き・・・・というのでしょうか。


同じマンハッタン・トランスファーのアカペラの極めつけに”A NIGHTINGALE SANG IN BERKELEY SQUARE”という曲があります。


ずっと昔、マンハッタン・トランスファーの日本公演を聞きにいった時、休憩なしの熱演の最後、メンバー全員が肩で息をするほどハーハーいっている疲労のピークに、アカペラで静かなバラード”A NIGHTINGALE SANG IN BERKELEY SQUARE”を完璧に歌い上げたことを今でも鮮明に思い出すことができます。背筋がゾゾゾとするほど感動しました。


ああいうのを目標にする志がも持てんのかなぁ、今の若者は。カッコイイの基準が低すぎるぞ。