名演その11〜一曲のためのLP
チャカ・カーンというアーティストがパワフルでソウルフルなミュージシャンであることは知っているのですが、彼女が本道を歌っているアルバムはどれを聞いても残念ながらあまり興味が持てません。まっ、趣味の問題ですから仕方ないのです。
ところが音楽に区分けをするのはおかしいといわれながら、彼女がジャズミュージシャンとジャズを歌っているものは、私には素晴らしく魅力的です。
"WHAT CHA' GONNA DO FOR ME"(恋するハプニング)のB面(1981年LPの時代です)に収録されている"AND THE MELODY STILL LINGERS ON (NIGHT IN TUNISIA)"(チュニジアの夜)は、アルバムの中で一曲だけビイバップの名曲「チュニジアの夜」を演奏しています。しかも同曲の作曲者である偉大なトランペター ディジー・ガレスピーも演奏に加わって。
ビイバップの名曲といってもこの演奏ではフォービートではなく、ファンキーなロックのリズムなのですが、、ガレスピーのソロと、1946年に音楽ファンを狂喜させたチャーリー・パーカーの歴史的なバカッ速い4小節のソロも使われ、当時としては異色のアレンジメントでありました。
さらに、私の一番のお気に入りはクラヴィータで参加しているハービー・ハンコックのソロです。たったワンコーラスでもハンコックのソロは見事で、この部分に近づくと「来るぞ来るぞ」とワクワクし、サビのⅡⅤ(ツーファイブ)泣かせ節のところでは毎回「クゥゥゥーーー、いいなぁぁ」とオヤジが温泉にでも使ったような極楽気分に浸るのであります。
おかげで、20年前に買ったLPはこの曲のところだけが擦り切れ、残りはまっさら。一曲だけを聞くために、さらに言えばハンコックのワンコーラスに酔いしれるためだけに聞くLPなわけです。
チャカ・カーンはその後チック・コリアを中心とする豪華メンバーを従えたグループと"ECHOES OF AN ERA"というジャズだけを歌った名アルバムも創っています。彼女のようなアーティストになるとブラック・コンテンポラリーだからとかR&Bだからとかジャズだからという垣根を越えたところで表現できるのですね。
それでも「チャカ・カーンはジャズに限る」・・・・といったら、筋金入りのチャカファンに怒られるでしょうが。