名演 その10


1974年 東京 郵便貯金ホール ケニー・ドリュー〜ニールス・ヘニング・ペデルセン コンサート


広いホールのステージにピアニストとベーシスト、たった二人のミュージシャンが演奏を始め、ペデルセンのソロが始まってすぐ、「おーーー!!」ため息ともどよめきともつかないざわめきが会場を包みました。


初めて来日した若いデンマークのベーシストの想像を越えたテクニックは驚きでした。


私など身を乗り出すように最初から最後まで聞き入ってしまったものです。


1960年代初頭のスコット・ラ・ファロの登場によって、ジャズ・ベースがただフォービートを刻むだけのリズム楽器ではなくなりました。


その後、エディー・ゴメス、ゲーリー・ピーコック、チャック・イスラエルなどのデビュー、さらにヨーロッパからミロスラフ・ヴィトスが現れて、1970年代にいたるまでにその傾向はかっこたるものになったのです。


しかし、前衛ジャズの台頭に伴って、はったりでも凄そうにみえるミュージシャンも数多くいる時代でもありました。


で、
1970年代、ペデルセンの存在がジャズ界に知れたときに、クラシックの基礎をそなえ、はったりなど全く必要ない完璧な音程、テクニックをもつヨーロッパのミュージシャンの底力を認識したのです。


ケニー・ドリュー〜ニールス・ヘニング・ペデルセンはデュオという、ごまかしがきかない演奏形態で二人の音楽表現してひとつの時代を創りました。


このデュオの初お目見えアルバム「デュオ」の「ウエイブ」「ハッシャ・バイ」はいまでも郵便貯金コンサートでの「おーーー!!」のざわめきを思い出させてくれます。