ときめきのバレンタイン
私が中学生の頃、お菓子屋業界のバレンタイン商戦などまだ夢の夢、「どうやらバレンタインズ・デイというのがあって、女性が男性に告白をしてもいいらしい」くらいの認識しかなかった時代です。
放課後人気がなくななった頃、同級生の女子が「ちょっと来て」と私は校舎の端っこの理科室前の廊下へと連れていかれました。
そこに見知った女の子を囲むように友人たちが三人。
その子は押し出されるようにして私の前にでて、うつむき加減でぶっきらぼうに「はい、これ」と包みを差し出しました。
バレンタインもチョコレートも聞いたことのある話、他人事でしかなかった私は、思いがけない展開に「ありがとう」も言えず、「あっ」といったままつ立っていたような気がします。
一大事を済ませた女の子たちはあたふたと小走りに去っていってしまいました。
私は包みを人に見られては大変とポケットにさっと隠し、多分真っ赤な顔をして教室に戻ったのだと思います。
家に帰って隠れて開けた包みの中身は、「ハイ・クラウン・チョコレート」
義理チョコなるものはなど考えもしなかった頃、小さなどこにでもあるチョコレートでも淡い気持ちが込められた包みは、一生の思い出となりました。
その後、そういう思いをいただいた経験が極めて少ないから覚えているだけかもしれませんね。
最近のように義理チョコと確認チョコ(?)ばかりになってしまうと、バレンタインにときめくチョコレートがなくなってしまって寂しい気もします。
個人的には義理でもなんでもたくさんいただきたいチョコ好きではありますが。