漆の薦め


お客様の中にはよくあるのですが、お椀を召し上がりながら
「家の倉庫(お蔵)の奥のほうにも確か塗りものがあるんだよなぁ」とおっしゃいます。


おじい様の代から続くお宅、代々受け継がれているお宅であれば、お蔵や納戸の奥のほうにしまいこまれた輪島塗があってもおかしくありません。


以前にお話しましたが、私ン処のような店でも、新築のための取り壊しのときに倉庫の置くから20客ほどの輪島が出てきたくらいですから。


大概そうして仕舞い込まれて忘れられた塗り物は古くなっているからとか、高価そうでもったいないからといってしまわれたままでいることが多いものです。


しかし、器は使ってなんぼ、特に輪島塗は使わないで乾燥させてしまったり、湿気の多いところでカビが発生したりするほうがよくありません。どんなに高価なものでも使ったほうが器のためにもよいのです。


輪島塗であれば、木地が割れたりしていなければ塗りなおしができて何代でも使うことができます。完璧なリニューアルができるのです。増してや陶器と違って木ですから落として割れるということも少ないものです。


ご存知ないかたのために・・・・・


漆器は使用した後、ぬるま湯に入れて柔らかい布のようなもので汚れを取ります。油分がついていたりしたら洗剤を少々いれてもよいのですが、多すぎる洗剤、たわし、金属製のたわし、熱湯は厳禁です。


拭くときも柔らかめの布で拭いて、すぐ使うなら二度拭き、そうでなければ風干ししておいて乾燥させてしまいます。つやがなくなったら、米ぬかを入れた布袋を作ってそれで磨くと光沢がでます。


面倒くさそうですが、そうしたものだと慣れてしまえば身についてしまいます。


せっかくのお宝であれば、生活を豊かにしたほうがいいですよね。


輪島塗の業者は販売や修理のために年に何回か訪れます。


こういう業者に町によるお得意様の違いを聞くと特長があって面白いものです。


料理店のお得意が多い町、素人筋のお得意様(お茶人?)が多い町、お金持ちのお使い物が多い町


ここ浜松は・・・・・寄る料理店、個人宅・・・・いずれも少ないようで寂しい。


私ン処なども高価な輪島は分不相応と思いつつも、さらなるグレードアップのためにも歯を食いしばって使っていきたい。