田作り〜身欠きにしん


「親方、身欠きにしんってこんなに時間かけるんですかぁ。いただいた身欠きにしんのパックの裏に書いてあった作り方は、もっとずっと簡単でしたよ」とパートでお手伝いに来てくださっている主婦。


お節に入れる身欠きにしんは、一晩とぎ汁に漬け、翌朝むすこと4時間、水にさらし続けてぬめりや汚れを取り、翌日味付けをして更に蒸すこと2時間、味を補って30分・・・・で出来上がり。計三日間です。


「身欠きにしんはこうやってつくるもんや」と先輩から教わりましたからそういう風にしか出来ません。


田作りは20代の頃、祖父から教わりました。


かわいい孫のために教えてくれるわけですから、職人気質バリバリの祖父も手取り足取りで懇切丁寧に教授してくれたように覚えています。


それでも、よちよちだった私には、地の煮詰め具合とか、ごまめの煎り方とかわかったようなわからなかったようなおぼつかないものでした。


それから20年経ってやっとあの時教わったあの感覚ってこういうモンだったのか、というのがやっと見えてきたようなきがします。全く愚鈍というのはしょうがありません。もしかするとコツをつかむというのはこういうことなのかもしれませんが。


昨年だったか、スーパーで買ってきた田作りと自分の作った田作りを見てその違いに驚きました。素材の違い、調理法の違い、味付けの違い。素人がそれだけを食べれば、「こんなもんかな」としか思わない田作りも私の目から見るとずいぶんと違うものです。


大手のお節料理調整の現場をみると、既製品をいかにそれらしくうまく盛り込むかに腐心していると聞きます。一般消費者もお節料理はデパートで買うものだと思っていらっしゃる方も多いようです。


お手軽ではありますが、決して・・・・・おっとっとっと、これ以上は営業妨害になってしまいます。


さ、大晦日まで追い込みです。


まじめに一つ一つ丁寧に。取り柄らしきものはやっぱりそれしかないみたいです。