鰯なんであります。


三重から送られてきたその鰯は、魚屋さんに言われるまで気づきもしませんでした。


「親方、こんな鰯はめったにないッスよ」


ただの鰯、しかもそれほどの大きさではないのにただモンじゃない、素晴らしい鮮度と脂ののりです。


教えてもらって、触って、「へーーーー」


魚偏に弱いと書くくらいですから鮮度が落ちるのがとても早い魚なのですが、まだ身が生きています。


こういう魚を見極める事が出来るのが魚屋の力です。


よくメディアなどで「お魚の鮮度」のお話になると、「魚の目がきれい」「エラが赤い」「身の弾力がある」などと紹介されますが、私達の魚の選び方はそこから先のところの選択眼が大事になります。


魚屋さんは目利きで商売するのですから、当然のようにその選択眼の素晴らしさは私達のさらに上にいる方々がいます。


その目を信頼して仕入れをすると、三枚におろしたとき、調理をしたときに「おお!」と思うほど予想以上の力を発揮する魚に出会う事があるのです。


で、
件の鰯はそういう品物でした。


もちろん、普段でもお刺身に出来る鰯は日常的に入荷はするのですが、私ン処で積極的に使いたいと思うような品物ではありません。


料理に一万円のお金を支払われるお客様に「鰯のお造りでございます」とお出しするにはそれなりの覚悟がいます。


早速手開き(包丁を使わずに指で開くことです)にして口の頬張ると、ほんとに素晴らしい。


今日のお造りは御前崎産白川の昆布占め、三重産真鰯、舞阪産真鯵


こんな組み合わせは一年に一度あるかないか、ご理解頂ける方に召し上がって頂きたい。