知ってしまった不幸
定期的にお見えいただくワイン好きのお得意様がいらっしゃいます。
料理への造詣も深いだけでなく、ワイン会も二つ三つを掛け持ちし、さらにチーズ・プロフェッショナルの資格まで取ってしまったといううら若い女性です。
このお客様が持ちこんでくださる食後用のチーズがいつもすばらしい。
最近やっとチーズの味、形と名前が少しづつ一致するようになってきた私には驚きの連続です。
持ってきていただくものの中にはデパートなどで手に入るものもあるのですが、その熟成具合がデパートのそれとはまるで違います。
様々なウオシュ系、青カビ系、コンティ、ミモレット、ゴーダ・・・・・
前回いただいたゴーダチーズなど、「今まで食べていたゴーダはなんだったんだ!」と思うほど全くの別物でした。チーズの熟成とはそういうものなのですね。
これまでにも様々なレストランでチーズをいただいてきましたが、すベてのチーズの熟成が程よかった事はありません。
彼女が持ってきてくださるチーズはすべてが抜群です。
若いボルドーしか飲んだことないワイン好きが、グレート・ヴィンテージの熟成したボルドーを初めて飲んだような衝撃です。
困ったのはデパートのチーズコーナーへいってもちっとも食指が動かなくなってしまった事です。
このチーズも、あのチーズもあの方が持ってこられたあれには遠く及ばないし・・・・と思うと買う気がしません。
美味しさの幸せを知ってしまった不幸です。