達磨正宗


昨日の続き


思いがけずネット上でお話をし始めた達磨正宗さんは、蔵元のお金持ち、偉い人のイメージとは違いとても気さくな方でした。


あれこれあってお話の流れの中、蔵を訪問させていただくことになりました。


「田舎の小さな」と蔵元がおっしゃった通り、地図で目印を探すのも大変なほどの田園風景の中、佇むというのがピッタリの小さな小さな蔵です。


挨拶もそこそこに、土蔵という感じの試飲室に並べられた綺羅星のような古酒を聞かせていただきました。


古酒の赤ちゃん(これから寝かせる古酒の新酒)から、三年、五年、十年、十五年、各種のブレンド、昭和53年、昭和54年、昭和51年の単体、AFS(別メーカーの古酒)さらに古酒のおりなどなどなど。


味を聞かせていただくだけでなく、製造方法や米、精米、澱引きの方法、貯蔵と瓶詰めの時期、ブレンド・・・・・さまざまな素人の質問にも蔵元ご夫妻は丁寧にわかりやすく答えてくださいました。


その後タンクや麹室、貯蔵コンテナの中のお宝の山などを拝見して、古酒がどのように生まれ出てくるのかを実際に目で確認できました。


この蔵には生産量が年間300石(かなり小さなという規模です)に対して、古酒の在庫が1500石、年間生産量の五倍の宝の山が存在します。


今、巷で見かけるようになってきた、吟醸大吟醸クラスのような米を磨いた酒を寝かすのではなく、70%精米程度の純米を10年以上寝かせ続けている蔵は日本中見渡してもほとんどありません。


今回伺って確信したのは、間違いなく達磨正宗さんの取り組んでいる試みは日本酒のあるひとつのスタイルを確立しているということです。


しかも、この試みは今年始めたからすぐ市場が反応するようなUP-TO-DATEなものではなく、最低でも10年という年月が必要です。


つまり、達磨正宗さんの独壇場が今後も続くということです。


こういう素晴らしい試みを続けていらっしゃる蔵はブームに押し流されず、地道に根強く知れ渡ってこそ価値があります。


お会いした印象では、これからさらに蔵を担っていかれる若いご夫婦はこうした道をしっかり歩まれるに違いありません。


何しろ、蔵に伺った何よりの成果はこのご夫婦の誠実で温かい人柄に触れられたことなのですから。


一般から見れば風変わりなお酒を造る人々は、風変わりでも頑固でも意固地でもなく、高い志を持った優しさに溢れた方々でありました。


古酒の醍醐味を知ってしまって達磨正宗の古酒のファンになっただけでなく、達磨正宗を育てる方々のファンになりました。




ラクラするような古酒の数々



左から古酒の赤ちゃん、時系列で試飲です



古酒の澱。アミノ酸の塊、蔵でなければこんな物見られません。料理に使えるかも?



左から二人置いて(笑)蔵元若夫婦。左のお二人がいなければ今回の訪問は実現しませんでした。さて誰でしょう?