古酒再び


掲示板で南部美人 久慈様や達磨正宗 白木様などという長期熟成日本酒にかけては日本でも有数の方々がお話をしてくださっていますし、常連さんのレベルも素人を逸脱した(?)料理屋 酒屋泣かせの高度なお話をしてくださいますので(誉め言葉です)、つい昨日のような古酒・熟成酒のラインアップを説明もなく並べ立ててしまいました。


考えて見れば、一般的には「日本酒を寝かせたら酢になるんじゃないの?」という認識を持たれる方が大多数です。


事実、ご来店いただいて「三年熟成した物です」と熟成日本酒をお出しすると、初めは怪訝な顔でご覧になる方のほうが多いのです。


戦後長く、日本酒はその年に造った物を飲むものとされていました。(江戸時代は違ったそうです)


封を切ったら即飲むべし、封切りの新酒を飲む事が贅沢と思われていました。


これも、日本人の「鮮度命」「新鮮崇拝」志向が生んだ、ある意味弊害かもしれません。


が、
大吟醸が巷で人気を集め始めた頃からすでに「大吟醸は夏を越してから」と言われていました。


心有る蔵では寒造りされた大吟醸は、半年以上経た秋も深まった頃初めて出荷されるものでした。


今では、いわゆる大吟醸も様々な酵母酒米の組み合わせで作られるようになって、飲み頃、仕上がり時がその組み合わせで全く違う事も認識されるようになってきました。


例えば、大吟醸の定番、山田錦と9号酵母を使ったお酒は仕上がりがゆっくりしています。反対にアルプス酵母では早いといわれます。


ですから「山田錦+9号酵母の中取り大吟醸の新酒 出来立てを新発売」などと銘打っていたら熟成と言う意味では「?」がつきそうです。出来あがったばかりのそういう大吟醸の新酒はおそらくガチガチに堅さが残るお酒であると想像されます。(もちろん新酒を味わうと言う趣向もないではないのですが)


蔵にして見れば、在庫を少しでも早く出荷したいわけで、普通酒と同じく大吟醸も早く早く出そうとする蔵もあるようです。


訳もわからず大吟醸を手に入れて、飲んでみたらまろやかさに欠けると思ったら、冷蔵庫で1〜2ヶ月置いておくと化ける可能性(あくまで可能性です)もあります。


以前に日本酒用冷蔵庫の奥に置き忘れていた封切り後の「十四代 愛山
 特吟」を見つけ、一年後に販売されたばかりの同じ「十四代 愛山
 特吟」と飲み比べると、忘れられていたお酒のほうがまるさ、穏やかさと言う点では美味しいという事がありました。


きちっとした温度管理がなされていれば、大吟醸クラスの物がどのように変化して美味しくなるのか、法則らしき物が出来るのはこれからです。


少なくとも、新酒=美味しい、古酒(熟成酒)=マニアック(変な味)という図式はもうありえません。


このお話はもうちょっと詳しく。