卵焼き


今年も新人が入ってきました。


鍋洗い、トイレ掃除、あいさつ、返事


新人にとって大事な事はたくさんありますが、料理自体の仕事でまず第一にやってもらうのが、私ン処では卵焼きです。


店によって様々、私が最初に入った店では大根の桂剥きでしたが、ここではともかく卵焼き。


お弁当にいれるヤツです。


卵焼き鍋で薄く卵を流しながらクルクルまいていくと言う作業は見た目以上に新人には難しいものです。


この作業を最初から見事にやりこなした新人は一人もいません。


失敗して、失敗して、先輩の手を借りてやっと一本が焼けます。


でも、焦げていたり、形が崩れていたり、商品として成り立たない一本である事のほうが多いのです。


卵焼きを一人前に焼けるようになるのに早くて2週間、人によっては一ヶ月を経てもうまく行かない場合もあります。


大概、三日目くらいに「なんでこんなにうまく行かないのか」と悩んでしまって、卵焼きに一ヶ月・・・刺身をひいたり、煮焚き物ができるのにどれほどかかるのか・・・・と頭を抱えます。


不思議な物で自転車と一緒でコツさえ身についてしまえば、「なんで悩んでいたんだろ」と思うほど単純な作業で、そのうち三本まとめて焼けるくらいになるわけです。


私の場合、小学校の頃から手伝いで卵焼きを焼いていましたので、修行先では自信満万だったのですが、いざ焼き始めると、関西の出し巻きと関東風(私の実家は当時関東風でした)では出しの割合も焼き方もまるで違っていてまるでダメ。


生来のぶきっちょも手伝って普通以上にうまく焼けるまでに時間がかかりました。


今年の新人は第一関門をクリアするのにどれくらいかかるのか?


卵焼きがすぐできるようになったからといって、職人としての素性がいいというわけではないわけで、いずれにしても長い道のりが始まります。