デイビット・リーン
仕事を終えてTVをつけると、BSで映画「ドクロル・ジバゴ」をやっていました。
デイビット・リーン監督の名作です。
昔ならリーン作品を放映するとなれば、見逃すまいと気合が入るのに、いつでもヴィデオ屋さんで借りられる時代ではありがたみが無くなります。
それでも、見られた後半のたった40分でも完璧にリーンワールドに引きずり込まれました。
人間の愛情とはなんと深い物か、自然美しさへの恐れと畏敬、詩作への憧れと情熱、歴史の荒れ狂う波。
多くのリーン作品は自然、人間、風土、歴史が複雑な織物の糸の様に絡み合っています。
「アラビアのロレンス」しかり、「ライアンの娘」しかり。
「アラビアのロレンス」ではリーンは砂漠を描いたと言われ、「ライアンの娘」ではアイルランドの自然を描いたと、「ドクトル・ジバゴ」ではロシアの冬を描いています。
自然が強調されなくても、「逢びき」「旅情」・・・・どの作品も人間への愛情に満ち溢れ、人生を豊かにしてくれます。
20代のころはまだヴィデオなど普及していませんでいたので、名画座でデイビット・リーン作品をリバイバル上映されるのを心待ちにしていました。それでも、「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」はなかなか上映される機会が無くて苦労しました。
アメリカ ワシントン州スポケーンという小さな町に滞在していた頃、シアトルで「ロレンス」をやると聞いて往復8時間グレイハウンドバスに揺られて見に行った事があります。
今の豊かな時代では信じられない所業ですが、こうやって見た「ロレンス」は一場面一場面がしっかり目に焼きついた物です。
郷里に戻ってたまたま映画館でリバイバル上映された「アラビアのロレンス」を見たときは、観客3名。
こんな名作を・・・・と地元の民度の低さを嘆いてもしかたありません。
3人のためだけの「アラビアのロレンス」を再び満喫しました。
それからもう20年経っていても、デイビット・リーンの映画は間違いなく私の心をつかんで離さない名作ばかりです。
こう言う監督を巨匠と言うのだと思います。