とりあえず、じゃないビール


私ン処ではビールだって「とりあえず」じゃないものを置きたいと思っています。


現在、生ビールが二種類。


といったって大きなジョッキではもちろんありません。


アサヒが限定で造る「琥珀の時間」(こはくのとき)は、ミュンヘンデュンケルという製法でできたすっきり切れ味のいいタイプ。


キリンがやはり限定で造るヨーロッパシリーズ。夏の「ヴァイスビール」 秋の「ボックビール」 冬の「ウィーンビール」と季節によって変わり、それぞれに味に個性があって、実際のヨーロッパのものよりずっと日本人向け飲みやすくできています。


本当は「日本人向け」という言葉は大嫌いで、はじめにこのヨーロッパシリーズを試飲したときも、もっと個性が無くては嫌だ、と思ったのですが、実際に食事と共に飲みつづけると、自分の肩肘張った主張はもろくも崩れました。


ヨーロッパのビールを何十種類と試飲してきて、面白いと思っても店のラインアップとして並べられないビールはやっぱり、食事と共に続けて飲めないからでした。最初の一杯の満足が持続しないのです。


そうやって考えると、「日本人向け」という言葉でくくられた、柔らかな個性は日本料理にとっては良いものです。


で、
去年の夏から使い始めたこのヨーロッパシリーズの生ビールは、思いのほか人気をいただいて、店も限定されたところでしか出さないということも加わって好調でした。


ところが、はじめは浜松で3店舗くらい扱っていたこのビールも、いつのまにか私ン処だけになってシリーズ自体も、今予約で作ってもらってある10樽でおしまいになるのだそうです。


私ン処の人気と評価は、世間一般では認められなかったということのようです。


「季節によって変わる」「限定の」「個性的な」ビール・・・・いいんだけどなぁ。


たぶん、あと一ヶ月で飲みきっておしまいです。


残念。