マイルス・デイヴィス その4
1956年頃のマイルスのお話をしましたが、いよいよ名作「カインド オブ ブルー」の登場であります。
1959年、マイルス・デイヴィスは世紀の名作といわれる「カインド オブ ブルー」を録音しました。その前の年に制作された「マイルストーンズ」で試されたモード奏法が「カインド オブ ブルー」で確立されたと言われます。
モード奏法とは何ぞや?
私など中学生当時「モードはコードプログレッション(コードの流れ)がなくて、ひとつのコードで演奏される奏法である」と知ったところで、演奏を聞いても何のことかわかりませんでした。
(後で理解したことですが)「ソー・ファット」という曲のベースだけを聴いてみてください。レミファソラシドレ・レドシラソファミレの繰り返しばかりです。レから始まる音階だけを弾いて曲が成り立っているわけです。(E♭も続きますが)が、一般人が聞くにはモード云々などという知識は何の必要もありません。
まっ、そんな小難しいことは置いておいても、マイルスのフレーズは美しく、ビル・エバンスのリリシズムは衝撃的でした。
たとえば、アルバムの中の一曲「ブルー イン グリーン」を聞いてみてください。1950年代にマイルスは心に残るバラードを何曲も吹き込みましたが、このバラードが50年代を締め括った記念碑的名演であります。
「ソー ファット」「オール ブルース」その後マイルスが数年にわたって演奏しつづけるこれらの曲も、このアルバムでの名演奏があってこそです。
キャノンボール・アダレーやウィントン・ケリー、ポール・チェンバースはモードのことを理解していたのだろうかと思うほどの演奏でも、マイルスの美しさがひたすら曲を紡ぎだし、マイルスの存在で他が影響されて歴史的な名アルバムが出来上がりました。
そのきらめきは40年たった今でも全く失せることはありません。
ジャズはどうも・・・と思う方でもこのアルバムは聞いていただきたい。マイルスはこれだけ聞くだけでもいい。
サザンの「ブルー イン グリーン」の前に、まず、マイルス「カインド オブ ブルー」の「ブルー イン グリーン」を。