マーラー

もうずいぶん前のことになりますが、サントリーのCMなどをきっかけにマーラーが大ブームになったことがあります。


若いお姉ちゃんが「今日はマーラーを聞きに行くの」なんて言うのが「トレンド」だったりしましたし、いい年したおばちゃんが「マーラー聞いてみたい」なんて、まさにブームでありました。


私など、マーラーといってもルキノ・ヴィスコンティの「ヴェニスに死す」で馴染んでいた五番のアダージョを知っているくらいで、ほかのどのマーラーを聞いても眠くなるだけの、同じようなフレーズが延々続く退屈な音楽としか思えませんでした。


クラシックもそこそこ聞いていたつもりでも、その程度の理解力しかないものですから、若い子が「マーラーがいい」とか「マーラーを聞きに行く」などと言うと、「ホントだな!」「ホントにいいって思ってるんだな!!」「私にゃ難解なあの音で眠っちゃわないんだな!!!」などと妙にいじけてしまうのでした。


ところが、友人が教えてくれたバーンスタイン〜ウイーンフィルの6番を聞いて心を改めました。退屈で同じような眠くなるフレーズが、一つの音楽を形作るための大切なフレーズの積み重ねであることが理解でき、退屈だと思ったのが、この心地よい響きが途絶えることなくいつまでも続いて欲しいとさえ思う音楽にできあがっていたのでした。


全く、音楽は演奏者次第です。


クラシック大全集などという、大手出版社の選んだ音楽で、優れた名曲を聴くべきではありません。


名曲が世界に認められるのは、名演奏があるはずです。少ない時間しか持ち合わせない板前には、極めつけの名演だけを聞く時間しかありません。


その後、インバル〜フランクフルト、ベリーニ〜ケルン、などマーラー極めつけを知ることができて、お姉ちゃんが言った「マーラーがいい」が少しだけわかるようになってきました。(インバルが来日するらしいですね。行ってみたいなぁ)


それでも、やっぱり全曲を素晴らしいとはまだとても思えない、貧弱な耳であることに変わりはありません。


ほかのマーラー極めつけ、あったら教えてください。