日本料理とワイン

掲示板で興味のある話題を振っていただいたので、お酒のお話。


私ン処では、食中に飲むお酒についてはできるだけ気の利いたもの、楽しんでいただけるものを取りそろえるように努力しているつもりです。


その中で、お客さまに一番飲みたいものをえらんでいただくのが理想です。


私の料理には純米酒でなくてはならないとか、この肉料理には赤ワインを飲むべきであるというような私からの押しつけは一切ありません。どう考えても無理がある組み合わせには「よろしければこちらの方が美味しく召し上がっていただけると思いますが・・・」とはご提案します。


基本ラインはビール、日本酒、焼酎、ワインです。


ワインはかなり早くから取り組んでいるアイテムです。


元々がフランス料理やイタリア料理には付きのものワインも、ワインブーム以前は日本料理店では苦戦の連続でした。


今でこそ赤ワインを注文なさるお客さまはめずらしくありませんが、「日本料理に赤ワインなんて・・・」という風潮は一朝一夕では崩せませんでした。


確かに、白身のお刺身にカベルネ ソービニオンの若い赤ワインでは無理があります。


しかし、例えば油の乗った赤むつの焼き物に、熟成したブルゴーニュのプルミエクリュ以上のものはどうでしょう?


例えば、賀茂茄子の田楽(八丁味噌を使った)の熱々に、ボルドー ポムロールなんてどうでしょう。


例えば、鰻の蒲焼き(私ン処では単純な蒲焼きは出しませんが)にボルドー サンテミリオンなんてどうでしょう。


例えば、牛肉サーロインをゲランドの塩と粗挽きの黒胡椒、備長炭で焼いたのになら、ボルドー グランバンではどうでしょう。(マルシャン・ド・バン・バターを添えて)


生の貝類にはロワールのソービニオン ブラン。


淡泊な揚げ物なら天だしだったらピノグリ、塩だったらシャルドネ(シャブリなんかのキリッとした)


お刺身にはシャンパーニュ


なんて言うのは、かなりありきたりな選択。もっと刺激的で面白い組み合わせがいくらでもありそうです。


とは言っても、二人で見えたお客さまに一皿づつの組み合わせでワインをお出しするわけには行きません。


フレンチの高級なレストランでも同様ですが、ソムリエさんが選ぶのは、お客さまがまず飲みたいものがメインに来ます。


赤ワインを飲んでみたいというなら、お造りくらいまでをすっきりしたビールか冷酒を召し上がっていただいて、その後、全体に無理のない熟成した赤を用意するのが順当です。


4名のお客さまでしたらさらにチョイスの幅が広がって、ブルゴーニュボルドー両方飲んでいただけるかもしれません。


あまり赤ワインの経験のない方、女性ばかりのグループの方、渋いのが苦手な方、酸味が苦手な方、かなりたくさんのワインを飲み込んでいる方なら、ワインにまつわる様々なお話もごちそうの一つになります。


要はお客さまが何をしたいか、何を望んでいるかが最優先です。


お望みの中から、これまで経験のない新しい世界を駈広げられたとしたら、料理と同じレベルでお酒も楽しんでいただけることになります。


そのためには、適正な価格での仕入れ、正しい熟成(日本料理に合わせるには熟成がホントに大事です)きれいなワインリストのラインアップが必要になります。


もう5〜8年したら私ン処のワインリストもかなり自分の理想に近いものができあがると思います。


でも、やっぱり料理とワインの組み合わせって言ったモン勝ち、お客さまレベルではあまり深く考えずに、まず、うまいワインとうまい料理が食べたい!!っていう欲求が大事です。


日本酒もうまいけど、ワインも。


こんなうまいものほっとく手はないっていうのがワインを扱う一番の理由です。