クーラー

今年の夏の暑さは老体にこたえます。


それでも、今の調理場はクーラー付き、暑い暑いとはいっても恵まれています。


旧店のころは、クーラーなんて贅沢なものは客室だけで充分、という時代に建てられたものですから、夏は下着を四枚五枚着替え、汗をめいっぱいかきながら仕事をしていました。


それでも不思議と夏バテなど知らない身体だったのです。


暑いときは、暑い暑いと汗をかくのがやっぱり身体には自然なのでしょうか。


先日、連れられて入ったかき氷屋さん。


クーラーなどなくて、表口と裏口が大きく開け放なたれ、それぞれに葦簾ばり、風がきれいに吹き抜けて、風鈴の音が涼やかでした。


もっともクーラーの利いたところで、かき氷を食べてもうまいわきゃありません。「こんなたくさん氷食べたら頭痛くなりそう・・・」と思うほどの大盛りを楽々食べてしまったのは、クーラーがないことと、吹き抜ける風のおかげでありました。


夏の料理も、昔は涼しげであることをとても大事にしていたのですが、外の暑さからクーラーの利いた店内に入ったお客様は、一気に汗が引きます。ですから、視覚的には涼しげな演出であっても、冷やしたもの冷たいものの連続では換えって味のバランスが悪くなってしまいます。


今では、この時期に小鍋をお出しして熱さをさらに演出したりします。
クーラーの利いた中で少々汗をかいても、問題ないどころか夏の面白みになるわけです。


おしぼりにしても、夏は初めに冷たいおしぼり、食後も冷たいおしぼりだったのが、今では初めは夏でも温かいおしぼり(熱いではありません)
食後は冷たいおしぼりにしています。冬になると食前食後とも熱いおしぼりになります。


時代と共に変化する料理の工夫と、気遣いの一つかもしれません。