ドゥルス・ポンテス
若い割に上手くて、見栄えもよくて才能を感じる人たちを、メディアは天才ともてはやします。
ポルトガルの歌い手、ドゥルス・ポンテスを知ったのは初来日の2〜3年前、日本での強力な推薦者である筑紫哲也のTVのニュース番組で歌ったときです。
まだ日本には一枚しか出ていなかったアルバム「カミーニョス」をすぐに購入し、20代半ばとは思えない抜群の歌唱力に唖然としたものでした。
ポルトガルといえば、ファドのアマリア・ロドリゲスの何曲かしか知らず、欧米人が歌舞伎を見るような目でしか知らない世界です。
そして今、ポンテスの新作「プリメイロ・カント」をやっとじっくり聞く時間をもてました。
三十歳を越えたポンテスを、若い才能とは既に呼べないけれど、「カミーニョス」で感じた「上手い」を遙かに越えたアーティストに成長していました。別の世界に到達してます。
歌い手としてのすばらしさだけでなく、曲を想像する力、アルバムを創り上げる力、すべてがワールドクラスといっていいと思います。
英語、フランス語、スペイン語以外でワールドクラスと言える音楽を発信できるアーティストが世界にどれほどいるでしょうか?
間違いなく、ポルトガル人が世界に誇る人材が誕生しました。
最初にあげた若い日本人音楽家達を、私たちが世界に誇る時代は来るのでしょうか?
それほどの才能をホントにメディアは見抜いて天才と呼んでいるのでしょうか?
ポンテスのすぐ後に、倉木麻衣の打ち込みだけのバックと感触の薄い歌声を聞いて、プロデューサーの影とマーケティング戦略しか感じないといったら石が飛んでくるかもしれません。