還暦


奥播磨」(下村酒造所)という兵庫のお酒があります。


宍粟郡(しそうぐん)、灘などとはちがう兵庫県でもかなり山の中です。追いかけ初めてもう3〜4年になるでしょうか、日本酒のリストにも何度か登場しています。


蔵人が4人という小さな蔵ながら、常にレベルの高い腰のあるお酒を造り続けています。


その奥播磨杜氏さんの還暦のお祝いに造ったお酒「還暦」が平成十年にできました。


今年はミレニアム流行で2000年の記念ボトルを沢山見たものの、杜氏さんの還暦祝いの酒というのを聞くのはは初めてでした。


蔵は山田錦最上の産地付近、精米歩合30%、しかも平均値ではなくて正味の30%。何度もふるいにかけて、割れた米ははじくという気の遠くなるような手間を掛けて、丹誠込めたという言葉そのままのお酒が不味いわけありません。


今流行の山田錦精米歩合35%以下の大吟醸になると、殆どのお酒がひたすら淡麗、さらっとした飲み口に広がる吟醸香、と、画一的になりつつあります。


が、
奥播磨はそんな時流に流されることなく、というより私など新しい試みとさえ思うのですが、しっかりした腰とコク、抑えられた吟醸香で酒らしさがきちんと残った大吟醸を造っています。


還暦はその奥播磨のあらゆる意味で頂点にあるお酒です。


研ぎ澄まされて美しいのに深い味わいがある。


酒らしい酒を愛する人にはたまらない逸品です。


しかも、これは還暦のお祝い用に原価や手間暇を考えずに造ったお酒。平成十年の400本以外は存在しません。


幻にもならない稀少酒なのです。飲んじゃったらおしまいです。


昨日お見えになった「還暦」大ファンのお客さま
「このお酒が無くなちゃったらボク何を飲めばいいんだろう・・・・」深刻な顔で悩んでいらっしゃいました。


私ン処にはまだ取り置きがあります。脅かす訳じゃありませんがお早い方が無難です。