来ちゃだめ
意地でもお断りしなくてないけませんでした。
昼間のフリーのお客さまです。
完全予約制ではありませんが、「できればお越しの前にお電話を一本いただければ」とお客さまにはお願いをしてます。特に昼食は仕出しの仕事、仕込みが重なっていますから、ご予約のないお客さまは基本的にお断りをしています。
「あり合わせでいいから」とか「軽く食べるだけだから」といわれても、筍が煮上がるのは2〜3時頃ですし、お刺身の鯛の熟成は夕方食べ頃になるように〆てあります。お迎えするためにはおしぼりを暖めておく必要もあります。玄関に水打ちもしなくてはいけません。お香も焚かなくてはいけません。
高くても安くてもお足を頂戴する以上「うまかった」「来てよかった」と思っていただくのが第一命題です。中途半端な仕事ではお客さまに失礼です。
昨日は昼食に4名様のご予約があり、そのための仕込みをしていました。
急にお見えになったフリーのお客さまがお二人。
「カウンターでよろしければ・・・」とお席にご案内しました。
普段なら95%お断りするお昼のフリーのお客さまでも、今日の仕込み具合ならなんとかなるか・・・、と計算したのでした。
少々お待たせするかも知れませんが・・・とお断りしながら調理場に細かく支持をしました。
取り繕うように料理をしてみてもやっぱり100%の充実度でありません。
素材も盛りつけもどこかやっつけっぽくてイライラが続いてしまいました。
極めつけは「ポイヤックの子羊」をお出ししたとき。
「あっ!僕も家内も肉だめなんだあ」
「・・・・・・」
どんなに最高級なお肉でも、嫌いな方には肉は肉です。
30分もかけて焼き上げたのに・・・と思っても、最初に「お召し上がりになれないものがございますか?」と急なお客さまで聞き忘れた私が悪いのです。
代わりに大鯛のカマを焼き始めたもののお待たせすること30分。
台無しです。
お足を頂戴することさえ憚られます。
「手間かけて悪かったね」とおっしゃってお帰りになったものの反省することしきりでした。
できない仕事はできないとお断りしなくてはいけません。
安くはない金額を頂戴する以上、お客さまがかまわないからとおっしゃっても納得できる仕事をするのが料理屋です。
わたしなら5000円以上払う店なら絶対予約の電話入れるけどなあ・・・
というのは私の言い分。自分勝手な思いこみです。すべてのお客さまに強要するのは不遜です。わかってはいるのですが。