さりげなく
「先回はいつ頃お見えいただきましたでしょうか?献立とお酒を確認しますので」
「一年前、床の間の桜が印象的だったからそんな頃だったと思います」
「お香が押しつけがましい香りでなくていいね。どこで求めるの?」
などとお言葉を頂戴しました。
嬉しい。
あれやってます。こうしてます。こんな努力をしてます。
は、必要ありませんでした。
つい、言葉過多にしゃべりすぎていたことがありました。
なにも言葉で主張しなくても理解してくださるお客様はたくさんいるのでした。
料理店は細部にいたる空間まで主人の美意識そのものが現れます。
主張しすぎる美意識は野暮といいます。
120%の積み重ねをお客様が20%しか感じなくてもいいではないか。
「いい時間だったな」と思ってくださればそれで充分すぎるほど充分です。
さりげなく、慎ましやかであること、忘れそうでした。
が、お客様が教えてくださいました。