癒やし系・・・ではない)


フイリッパ ジョルダーノ


昨年の10月30日
バチカンの盛大なミレニアム プレイヴェントで唯一のゲストして招かれ、「アヴェ マリア」たった一曲を歌って一躍シンデレラとなった歌い手です。


ポップ感覚の新しいクラシック。というのがうたい文句のようですが、そんな陳腐な紹介ではもったいないほど優れた歌い手で、画期的な企画です。


CD店では「癒やし系」として売れ筋にもなるのですが、そういうくくり方も音楽業界の民度の低さを感じてしまいます。


今や、ではなくてもうずっと
クラシック=上手い 芸術的
ポップ=感性 大衆的
は、まったく通用しません。
優れた音楽家の感動的な音楽があるだけです。


クラシックのアリアやバラッドをクラシック以外のアーティストが取り上げることはこれまでもよくありました。バーブラ ストレイサンドの「クラシカル バーブラ」や矢野顕子の「ブロウチ」などは企画としても優れていましたし、演奏のレベル高さとアルバムとしての質の良さは長く聞くに耐えるものです。


逆にルチアーノ パバロッティの「カルーソ」などアリア集の中に組み込まれたポップでもまったく違和感がなくて、私などこの一曲のために2枚組CDを買ったほどの名演です。また、キリテ カナワとナタリー コール アンドレ プレビンのジョイン コンサートなどもどちらが歌が上手いとか声がよく出るなどという比較をしたら笑われてしまうほどクラシック ポップ両者の類い希な表現者が共演していたコンサートでありました。


後はアーティストをどれだけ垣根を取り払って聞くキャパシティーを持てるかという聞き手の資質の問題でしょう。


で、
フィリッパ ジョルダーノはさらに新しいアリアの表現者として鮮烈なデビューをしました。心が癒やされるか、感動に包まれるか、普通のクラシックなみに眠くなるか。


一聴の価値はあるアルバムだと思います。