爺ちゃんたちのガンバリ


ディー ディー ブリッジウオーター「ディア エラ」


ジャズヴォーカルの巨星 エラフィッツ ジェラルドに捧げたアルバムです。


1997年の録音だというのに最近は情報誌を確認することがないので知らないでいました。


ディー ディーは日本デビューのコンサートを見ています。1974年のサド ジョーンズ〜メルルイスオーケストラのヴォーカリストとして忘れられない「バイバイ ブラックバード」熱唱。もう26年も前なのに今でもはっきり思い出せます。


当時のサドメル オーケストラはビックバンドの最先端を突っ走っていました。お金のない学生でしたが、無理をして東京公演を2回続け見たバンドはサドメルだけです。コンサート後の夜は興奮して寝付けなかったものです。


16名のすごいメンバーに対等に渡り合う20代半ばのディー ディーは坊主頭がかわいらしくって、自由奔放で期待の新人そのものでした。その後、いくつかのアルバムはあったり、ミュージカル「ソフィスティケーティド レディー」のオリジナルメンバーだったりしていますが、私にはあのときの「バイバイ ブラックバード」以上のインパクトはありませんでした。


が、


この「ディア エラ」にはやられてしまいました。


考えてみれば、大聴衆を前にトーミー フラナガンのピアノトリオだけで会場を暖かさで包み込んでしまうエラフィッツ ジェラルド。彼女の大きさとかわいらしさを表現できるのは今、ディー ディー意外にはありません。ぴったりです。


ディー ディーの歌のすばらしさは言うまでもないのですが、さらにグッとくるのが共演者。


レイ ブラウン、ルウ レヴィ、グラディ テイト、ミルト ジャクソン、ケニー バレル、スライド ハンプトン、バージル ジョーンズ、ベニー パウエル、ジョン クレイトン、そして元旦那のセシル ブリッジウオーター。


昔を懐かしむナツメロ大会ではありません。日本の歌謡曲とは全く別レベルです。
ただの爺さん達ではありません。


レイ ブラウンとグラディー テイトのベース ドラムのコンビネーションはドライブしまくっていてどこかへ飛んでいってしまいそうなときがありますし、ケニー バレルのギターバッキングによるデュオは極めつけと言っていい演奏です。ミルト ジャクソンも音の一粒一粒がスイングしていて、一つのソロだけで圧倒的な存在感を示しています。


繰り返して言いますが、ただの昔を懐かしむ音ではないのです。
「これが、スイングつーもんや!よう見とけ若いの」ってな爺さん達です。
人生の味わいとか枯れたなどという敬老の精神による誉め言葉など失礼です。
存在そのものがジャズという凄みを感じるのです。


トリオ コンボ ビックバンド オーケストラ デュオ あらゆる形のジャズ ヴォーカルの醍醐味を満喫できて、ため息だけが残る久しぶりのヴォーカル アルバムでした。