ヴェルジェ


白ワインというとどうしてもブルゴーニュを思い浮かべてしまいます。


モンラッシェを頂点に(一度も飲んだことがないのですが)ムルソー、シャブリ、ピリニー シャサーニュ モンラッシェ村には綺羅星のような白ワインが多数あります。優れた作り手の多くは代々受け継がれる名家なのですが、ボルドーに比べて遙かに規模の小さなブルゴーニュの作り手にはいわゆる新進気鋭、と呼ばれる新しいスターがいます。


中でも、ずーーと追いかけているジャン マリー ギュファンというベルギー出身の醸造家のヴェルジェというネゴシアンのワインが大好きです。


ネゴシアンというのは自分の畑を持たず、栽培農家からブドウを買い取り、ワインを造るメーカーのことです。ドメーニュという畑も所有し、醸造もする作り手とは少々違います。


ジャン マリー ギュファンもギュファン エナンというドメーニュで醸造することもしているのですが、一般的なのはネゴシアン物のヴェルジェです。


栽培農家からブドウを買い取るといっても、ヴェルジェの場合栽培法から摘み取り時期までジャンの厳しい目が行き届いていますから、ドメーニュ物に負けるということは全くありません。ヴェルジェの栽培農家となった人が、ジャンのお眼鏡にかなったくらいだからと、自分で醸造まで手を出した処、見事に失敗した。という逸話があるほどジャンの実力はたいしたものなのです。


最近、ブルゴーニュについてはロバート パーカー Jr.よりも確かだと言われるワイン評論家タンザーさんのヴェルジェの評価も素晴らしく高く、コシュ デリなどと肩を並べると絶賛されています。


ヴェルジェに出合ったのが1990年代始め(しっかりした年まで覚えていません)プイイ フッセを飲んだときです。そのあまりにもすばらしい印象に日本料理とワインの相性を真剣に考え始めました。まさに転機の一本でした。


以来、ヴェルジェのワインは私ン処のリストからはずれたことがありません。ただ、以前はサシャーニュ ピリニーモンラッシェクラス、ムルソークラスのワインも若いものを出していたのですが、もっと熟成した良さをと、セラーに寝かせたままじっと出すのを我慢しています。プイイ フッセの’95がやっとリストに登場したところ。(サイトのワインリストには載っていても店のリストにはまだです。)


’94のコルトン シャルルマーニュに始まって’95 ’96にかけてのヴェルジェのラインアップはこれから数年私ン処のワインリストの花形になってくれるはずです。


それに加えて、ロアリーのマコン、マルク コランのサントーバン、アルノー アントのムルソールフレーブのピリニーモンラッシェ、同じくルフレーブのバタール モンラッシェが太い骨組みなります。脇を固めるエティエンヌ ソゼ、ギイ アミオ、マダムビーズ。これでモンラッシェが手に入れば理想的ですが、入手できたとしても高くて売れないでしょうから自分で飲んじゃいます。(飲みたい方が先?)


ヴェルジェにこんなに思い入れがあるのは、そんなに脚光を浴びてない頃から注目していた新人が、スターになっていくのを目の当たりにしているからなのですが、前述したムルソー村のアルノー アントがまだ無名ながら素晴らしい。ジャン マリー ギュファンスみたいに化けるかもしれないと思っています。


’95 ’96という年は誰が造っても美味しいワインができたのですが、アルノー アントは’97でもとても凝縮した味わいのあるムルソーを造っています。「えっ!これでACのムルソー?」と思うほどいい。どんな人物で、どのような作り方をしていてなどという情報は少ないのですが、私の舌には確かな手応えを感じました。しばらく追いかけたい作り手がでてきてくれたことは嬉しいことです。