デビュー直前


1980もう二十年も前の話
あこがれのニューヨークに一ヶ月ほど居たことがあります。
板前としてなら箔も付こうてえもんですが
ただのプータロー(不良外人)ですから
毎日昼はメト グッゲンハイム モダンアート、夜はヴィレッジ バンガード ボトムライン
てな具合で安ホテルに転がり込んで毎日遊んでいました。


ある晩、ボトムラインにジャズメッセンジャーズを見に行ったときのこと


グループ前列の3管トランペット アルトサックス テナーサックスは
いつものように若い新人が揃っていました。
アート ブレーキーのろれったような英語では
ただでさえチンプンカンプンなのに名前が聞き取れるはずがありません。


なかでもトランペットの若いやつはほとんどスーツを着た子供
とでも思えるような幼顔なのに
でてくるフレーズは信じられないほど素晴らしい!
2〜3コーラスの短いソロでも構成力がしっかりしていて
やっつけのごまかしが一音たりともない
「もしかして、譜面書いてンじゃないの?」くらいの完璧なソロばかりでした。
このグループの新人にはいつも驚かされることが多いのは
ジャズファンには周知の事実ながら
「やっぱ ニューヨークはすげーなあ」と底力に驚いたものです。


日本に帰って数ヶ月
夏の「ライブ アンダー ザ スカイ」で
ハービー ハンコック、トニー ウィリアムス、ロン カーターのトリオに互角に渡り合った
トランペッターがいました。
衝撃の日本デビューを飾ったウィントン マルサリスです。


「アッ!こいつ」
ボトムラインでみたあいつです。


もっとうまくなっていました。


デビュー前に見たことあるだけで自慢にしたいような・・・
自分で発掘したみたいな気分になったものです。
一回見たことあるだけなのにネ。