日記のお手本


中野翠さんといっても恥ずかしながら、ライター、アグネス チャンと論争した人(?)くらいしか知りませんでした。


で、


ある書評で誉められていた「へなへな日記」を読んでみました。


週刊誌に連載されていたコラムを集めたものですが、一級のライターが書くと「日記」もこれだけおもしろくなるか、とあっという間に読んでしまいました。


世相に対する切り込み、芸能に関する造詣の深さ、映画への思い入れ。


素人が読んでもしっかり納得させられる平易な文章と感性は日記のお手本であります。


曰く、
TVのお笑い番組、バラエティ番組はだんだん見ないようになってしまった一つの理由は、「たんなる無知」を「天然ボケ」と言いくるめるような詐術が幅を利かすようになったからである。女はやっぱりバカだと安心したい男たち、若者はやっぱりバカだと見くびりたい大人たち。これと「楽して目立ちたい」という女の子たち。両者の合意から生まれた詐術だと思う。


そうか!
天然ボケ=たんなる無知
そうだよなあ。


曰く、
「シン.レッド.ライン」を強力に推薦したい。・・・・・・生と死のギリギリの境目。「運命」というものを体の毛穴一つ一つで感じ取るような瞬間。純粋にむき出しに劇的なるものをこれでもかと目の前に突きつけてくるような戦闘場面だ。・・・・テレンス マリックは、何より「人間の根本的な姿を描きたい」という気持ちだったのではないかと思う。


全然良さがわからない映画でした。ヴィデオがでたらもう一度トライ。


曰く、
福助(歌舞伎の)の変貌ぶりを確認したいということだった、・・・・何といったらいいのだろう・・・変な言い方かもしれないが「空気が濃くなった」という感じがするのだ。福助の体の周囲の空気が濃くなった。歌舞伎という異常な世界へと引きずり込む、そういう誘惑的な空気がでてきた。


見てみたい。


曰く、
顔黒と書いてガングロと読む。茶髪と書いてチャパツと読む。いったいどこのどいつが考え出したかしら知らないが、卓抜なネーミングだ。今、巷に氾濫するあのビッチな流行ファッションには、このあまりにもガサツな日本語がピッタリだ。・・・・どこからどう見てもかわいいともきれいとも恰好いいとも思えない。むしろ多くの人々がまっさきに感じることは、「こわい」なのではないだろうか。まるで「私は馬鹿です」と書いてあるようなものだ。・・・・「地味なブス」より「派手なブス」のほうが偉い、「かすむブス」ではなく「目立つブス」のほうが恰好いい−−そういう思想が生んだファッションなのだ。


大拍手。
そうだ。変なことは「変だ!」と声高らかに言った方がいいんだ。


というわけで、納得しまくりの一冊でした。