剥き物
鶴 亀 都鳥 木の葉 菊
などなど
大根や人参、さつまいもできれいに作り上げるのを「剥き物」といいます。
近頃では料理屋であまり見かけなくなりましたが、
昔、婚礼や結納 祝い事には欠かせないものでした。
祖父の頃には板前の技術の程度を計る目安でもありました。
鶴亀が剥けない板前では大所の親方は勤まりません。
祖父はもちろん上手でした。
父はあまり・・・
で
今、私ン処ではほとんど剥き物をすることはありません。
が
私ができないかというと
結構上手です。
素人が「おお!」と思うくらいの品物はお茶の子さいさいです。
自慢じゃないけど
実際、この技術は今の世の中では自慢になるものではないのです。
一昔前、結納に「鶴亀 鴛鴦」を剥いて祝いの膳に添えれば
「いい仕事をしてもらって」と
ご祝儀を頂戴するのが当たり前でした。
祝儀袋やぽち袋を持たないような無粋なお客様は料理屋に足を運びませんでした。
昨今は・・・
ご祝儀がもらえないからやらない仕事
ではないのですが
時代の趨勢が「味」そのものにシフトしていることは間違いありません。
「剥き物に使う時間があるなんなら、もっとうまいものを!」
ってことなんでしょうか。
が
私にとって、今使わなくても
「できる」という自信は裏付けとしては大きな財産です。
30代初めの頃、3年に渡って毎週勉強会をしていた賜です。
先生は名人とうたわれた職人さん
80歳でこの親方が亡くなる直前まで続けられました。
小柄で角刈り
いつも着流し姿で
袖からときどき入れ墨がちらっと見えていました。