分相応


世はイタリアン クラシコなんだそうで
いや、男性ファッションの話し
しかも30代半ば以上の傾向なんですけど


落合正勝氏「クラシコ イタリア礼讃」などを読むと
ただイタリアのオーソドックスでクラシカルなスーツというのだけでは
「イタリアン クラシコ」」とは言わないようで
板前風情にはまさに分不相応な品物なのでした。



板前風情とはいいながらスーツを着なくてはいけない場が
週に一回くらいはあります。
父が亡くなってからはそんな場に顔を出さなくてはならないケースも増えて
さすがに、夏冬1着づつでは済まなくなりました。
もう数年前の話しです。


スーツ選びの基本は食事のマナーといっしょ
「同席の方々にイヤな印象を与えない」
だけを頼りにするのですが
いざ、そんな店を探して何件か回るうちに
「ありゃ??」
という店がありました。
ストーンと肩にのっかって、体を包む感じ。着ているというよりは包まれている。
「なんだ!全然他と違うジャン」
値段0が一つとまではいかないにしても
2〜3倍は高い


「何着も買う訳じゃないからいいか」

怪我するぞ怪我するぞとハラハラしながらも清水の舞台から飛び降りてしまいました。
これが
ターンブル&アッサー
イギリスのプリンス オブ ウェールズ御用達とかいうシャツメーカーでした。


そのころはバブルがはじける直前
ソフトスーツが巷にあふれ
小金を持った若者がアルマーニ ヴェルサーチを競っていました。
さすがにこんなタラッとした服を着こなす自身などあるはずもなく
「これじゃ七五三」とりっぱに羞恥心も人並みにあって
「イギリスか。これなら着安くって目立たなくていいな」
としばらくこれでOKとなりました。
(分不相応)


実はこのターンブル&アッサー
英国では最低6着単位でシャツをオーダーで仕立てるのが当たり前
というとんでもなく私には分不相応な店だったのですが
バブルもはじけ2〜3年で日本から撤退してしまいました。
残ったのが体が覚えてしまった
肩で着るスーツの着心地の良さ
(分不相応)


そこんところを求めて探すとたどり着いたのが
イタリア系のクラシックな服(イタリアン クラシコではありません)
やっぱりたまーーーーに
(前の服がすり切れた頃)
店を覗くだけなのですが
出てくる出てくる
「えっ?シャツってこんなにしっかり作るもんなの?」
「こんな幅ヒロ甲高の日本人足にぴったりする靴があるの??」
「チノパンなのにこんなに違う・・・・」
「頬ずりしたくなるほど美しい生地」


待て待て
分相応って言葉を忘れるな!
金が湧き出る泉を持ってるわけじゃないぞ!!
毎日大理石の上を歩いてるわけじゃないぞ!!!
日々ドロドロになって汗する日銭労働者だぞ!!!!


これじゃ
シャネラー
グッチやルイ ビトンの新作を二つ三つ持つことに満足する若い女の子と同列です。
わたしゃ板前 板前です。
調子に乗ちゃいけません。
「いいものはいい」
なんて小娘の言うことです。