残す


来店していただいたお客様の全ての皿が、すべてきれいに残さずもどってくる
と言う日はなかなかあるものではありません。


お酒が入ると箸が進まなくなる方
苦手な物がある方
小食の方
これは仕方ない
もちろん事前に苦手な物をおうかがいしていなかった場合でも
「ダメ」とわかればなるべくすぐ代わりの物お作りするのですが


たまにある一口だけ食べてさがってきてしまう皿
「まずい!」ってことなのか?
「自分が思っている料理と違う!」ってことなのか?
ただの気分屋さんなのか?
いずれにしても楽しい時間を過ごしてはいないのではないかと想像されます。
私がわざわざお部屋に伺って「お口に合いませんでしたか?」
などと言ってしまうと
座が白けてしまいますのでそこまでは決してしませんが
大変気になるものです。


もっと困るのが
最後の一口だけを残して皿をスッと脇へやる方
「この料理食えないことないけどダメだよ」
と強烈に自己主張しているようなものです。
カウンターの目の前でこれをやられると、
もうその後の仕事の気力が一気に失せていきます。
カウンターですから、その方の雰囲気や料理の知識などなども見えるのですが
たいがいこういう自己主張をしがちの方は
自信家
「あそこのこれはおいしい」
「あの店はだめ」
と披瀝したがる
(料理屋に来て他の店批判ばかりをなさる方は困りもんです)
(逆に他の店ばかりほめるのもやっぱり困りもん)
などなど
やはりいっしょに食事して楽しい雰囲気を持つ方ではありません。


板前としては献立をたてるときも作るときも
「これが一番」とぎりぎりの処で仕事をしているつもりですから
明らかなミスでない以上
「これでダメなら仕方ないか」
と思うわざるよえないのです。


私なら残してしまうような店には2度3度は伺わないのですが
これが来るんだ「一口残し」の方
2度3度と