がんばれホテル


20年いえ10年前まではホテルはあこがれでした。
今でも大都市の超高級ホテルはあこがれの存在ですが、ごく一部かも知れません。


あこがれだった頃、
一流ホテルのお得意であることはステータスでした。
貧乏な私などロビーに座っているだけで別の人格に成れるような気がするほど
いい気分にさせてくれる雰囲気がありました。


大阪での修業時代
寮、というよりはタコ部屋のような、
一日中陽の当たらないベット一つの空間から逃げだそうと
休みの日にプラザホテルに泊まったりしました。
1泊がものすごく贅沢に感じたものです。


お客さまが大阪の有名ホテルで結婚式を挙げることになりました。
二人の誕生年ワインと記念年ワインを用意してもらいたくて
ホテルのソムリエさんにお願いしました。
「持ち込みは結構ですが、古いヴィンテージのワインを探すことはできません」


で、私がかわりに探しました。
大ホテルのソムリエなら仕入れルートの豊富さを考えると難しいことではありません。


ヴィンテージを考えると一ヶ月前には送って旅の疲れを癒やした方が
と思ったのですが、
「スペースがないので、早くお預かりできません」


一流ホテルならばセラーのスペースくらいーーー。10本だけなんですから
何十年も熟成を重ねたワインに畏敬の念があればーーー。


せっかくのワインなのでそれにまつわるお話をソムリエに
と、お願いしたのですが、
「持ち込みのワインにコメントはできません」


すべておっしゃるとおりなのですが、
ビジネスや、利益の外にある
「ソムリエのワインへの愛情」とか「ノーと言わないサービス」とか
「やっぱり一流ホテルは違うわ」と思わせる心遣いは
企業からはでてきません。


ほらほら
ウカウカしてるとこんな小さな場末の店にお客さま取られるよ。
がんばれホテル!