毎日違う


日本料理ですので、毎日必ずお出しを引きます。
その中でも特に気を使うのが、お椀の吸い地に使うお出し。
出し汁、そのものの味を味わっていただくわけですから当然です。


これが、何年やっても難しい。
毎日違う。
もちろんお客さまにわかってしまう範囲で、ではないはずですが。


煮物ほか全般に使うのは真昆布(かっくみ)と鰹節(枕崎)
吸い地には利尻昆布と同じ鰹節の血合いを除いたもの。
もちろん、朝と夕方二回に分けて削りたてを使います。


お椀の出しはどんなに忙しくても、お客さまの予約に合わせてぎりぎりに引く。
素材はこの辺で手に入る最高級。
当然手順もきっちり。
それでも、日々の微妙な違いを克服できないでいます。
いい年こいて


やっぱり、「神様、私にホンのちょっとの才能を」
と神頼みしても
もう無駄?


で、
神様からあふれんばかりの才能を授かっている人々がいます。
「ジム ホール  パット メセニー」
二人のジャズギタリストのデュオアルバムを聴いています。
二人の天才の丁々発止
ではなく、
お互いを尊敬しあう、暖かいながらも緊張感あふれるパーフォーマンスです。
中でも、名曲「オールザシングス ユーアー」は、
この曲だけのためにCDを購入してもいいほどすばらしい。


彼らのタイム感覚、とお互いの調和を考えたハーモナイズはどうしたら生まれるのでしょう。
これこそ、神の与えた才能同士に、
さらに、神が上機嫌に至福の時間を与えてしまった瞬間なのでしょうか。


この二人、人柄もすごくいいんだろうなあ。
などと演奏を聴きながら思ってしまいます。


実は、ジムホールとはちょっとだけお話ししたことがあります。
もう、20年近くも前の話。


N.Y.はヴィレッジヴァンガードで。
その日はビル エバンスが亡くなって、教会でメモリアル サービスがあった翌日でした。
「インタープレー」「アンダーカレント」で、共演をしているジム ホールも
そのミサで演奏し、他にもそうそうたるメンバーの勢揃いでした。
(私の隣にはジミー コブがいたりして。)


翌日のヴィレッジ ヴァンガードの演奏はもちろんすばらしいものでしたが、
休憩時間にトリオの面々が私の隣のテーブルに座りました。
「昨日のビル エバンスのメモリアルサービスでもあなたの演奏を聴きました」
と私。
「そうか。ほんとに悲しい出来事だよ」
と ジム。
ビル エバンスのこと。前のステージの曲のこと。
話してみても、演奏と全く同じまじめで飾るところのないほんとにいいおじさんでした。
当然、ますます好きになりました。


もひとつ
私の友人の話。
彼がL.A.で貧乏旅行をしているとき。
マーラーを聞きに行ったんだそうです。
L.A.のことで、車のない旅行者にはコンサート帰りのアクセスも大変。
困っているところへ、品のいい初老の夫婦がやさしく車に乗せてくれたそうです。
彼によれば、このかた大変音楽に造詣が深そうで、ギタリストだということ。
「名前なんての?」と私が聞くと
「ローリンド アルメイダっていったけ」
おいおい、すげービックネーム!!
ジャズに興味のない彼には知らなくて当たり前ながら
これもアメリカの懐の深さか?(ちょっと違うか)
でも、こんなことあるんですね。