甘いって言わないで


日本酒もワインも辛口がブーム
「甘い」っていうのは否定的言葉になってしまっています。
「甘くて (おいしくない)」
ってことなんでしょうか。


甘いものがごちそうだった昔(かなり長い時代)
「甘い」は甘美とか甘露というほどおいしい意味だったのです。
祖父の頃、キントンをねるのに
「もう一杯砂糖入れとけ」
というのはさらにおいしくという気持ちを込めて言っていました。


日本酒だって甘いものだったのです。
剣菱などの辛口がもてはやされた頃から辛口に移行したのでしょうか。
吉兆の湯木貞一さんだって
「日本酒は甘口がいいですなあ」
とおっしゃっています。


としてもお酒の甘口辛口の議論はほんとにわかりづらい。
あくまで個人の感じ方の問題ですから。
同じお酒でも
「辛口ですね」「甘口ですね」のお客様の意見は全く逆だったりすることはよくあります。


うちに置いてあるお酒は、甘い辛いで表現しては申し訳ないと思うほど
いいお酒ばかりですし、
ホントにお酒がお好きなのだなと思われる好い飲み手は
決して「甘い」という表現は使われません


料理でもお酒でもワインでもまずほめ言葉から探すというのは
おいしいものを食べる、またはその場の雰囲気を楽しくするコツでしょう。
その点、ワインの表現は立派です。
否定的な言葉より肯定的な方が優先する。
ワイン好きなお客様にも当てはまるかもしてません。
日本酒も見習わなくてはいけません。


日本酒もまず、おいしさを表現してみましょう。
ちょっと先に甘さに近いものを感じたら
「ふくよかさがありますね」とか
「ボーリューム感がいいですね」とか
こんなこといわれたら、絶対私なら取って置きだしちゃいます。
料理人って単純だからほめられるとすぐ乗っちゃいますから。