ライバルから憧れへ


豊橋フラスカティさんへ伺ってきました。


定休日が同じ日曜日で、この数年なかなか伺う機会を見つけられませんでした。




お客様に「お薦めのレストランは?」と訊かれたとき、半径70km範囲内ならば一番にあげるのは間違いなくこの店です。




料理はシェフ榊原さんにワインは奥様にすべてお任せ・・・というわけで出てきた最初の一皿は、


真鯛カルパッチョと桃 ルッコラ


と書けば、イタリアンの経験者であれば誰でも作ることができる料理に思えます。私だって字面だけで想像して作ることはできます。


が、
その皿の迫力、力強さは全く別物なのです。


ギリギリの処まで突き詰めた塩味のパワー、それに絡みつくレモンとオリーブオイルのハーモニー、桃の熟した甘さ、鯛の旨味、すべてが自己主張しているのに寸前の処で調和しているのです。まるで名人ばかりが集まったオーケストラを指先一つでまとめ上げてしまうマエストロのようです。


この力業は私にはとうてい再現できません。小洒落たイタリアンで美しく飾られた皿にこの凄みを感じたことも一度もありません。


これを一口食べた瞬間に「あっ、今日は写真で残すことも、メモをとることもやめて、榊原さんと奥様の世界に浸りきろう」と決めました。



一皿目のインパクトは当然のようにさらに続き、


リードボーのソテーは火通しが絶妙で別世界だし


鮎のタリアテッレは初めて手打ちタリアテッレのあり方を教えてもらうような完成度だし、


蛸とジロール茸の旨味の凝縮感は赤ワインで口いっぱいに広がるし、


ブルターニュの仔牛のカツレツは、コトレッタミラネーゼの正しい姿はこれなのか!と見せつけられる大技です。


これらが、クールでさわやか、微笑みを絶やさない奥様のサービス提供されるのです。すべての料理のどこを尋ねても料理方法から素材の出所、ストーリーまで嫌みなくかえってきます。



すべての料理はどこかのイタリアンでもきっと同じような献立を提供しているはずなのに、榊原さんでしかなしえない榊原さんの迫力で食べ手に「どうだ!」と迫ってきます。


近隣のすべての料理店の中で、最高のライバルと思っていたフラスカティさんは、すでに憧れる存在にまで到達していました。


これからは私が追いかける番です。