行列の秘密?


この夏も「ほろ酔い祭り」が開催されました。一週間前のことです。


知名度の低い小さな料理屋の割りには、毎回そこそこご支持をいただいていて、お席にご案内するまでにお待ちいただくこともたびたびありました。


ところが今年は、どうしたことでしょう、今まで以上の待ち時間、開店直後から最終まで最低三十分〜一時間待ちで常に行列ができているという前代未聞の状態が続きました。


献立の微調整はあるとはいえ、お出ししている料理 お酒の類いに大きな変化はないのに、この人気、訳がわかりません。


パンフレットで他店の献立を拝見すると原価を無視した赤字覚悟の料理を提供している店がたくさんあるのに、なぜ??




もともと地元発展会主催から始まった「ほろ酔い祭り」ですので、お付き合いの参加でした。


一品の料理と一種類の飲み物で数十分、相席でワイワイガヤガヤはしご酒をする企画は、価格の面からしても弁いちの本来の姿からはほど遠く、店にとってはハードルの高い難しい内容です。


一般的な弁いちのお客様は予約をして、コース料理とお酒を二三時間かけてゆっくりと楽しんでいただくのが本来の姿です。


そんな日常を繰り返している店が、お手頃なお酒と軽い一皿を見知らぬ方を隣にして楽しんでいただくことができるのかどうか?当初から、この企画はこの企画だけのものとして、料理とお酒で店を知っていただくきっかけになることにも大きな期待をしないでお付き合いをしてきました。


お手頃価格の料理とお酒での満足・・・・私にはものすごく難しい。


ところが、「この店は普段は敷居が高くて。。。」と思われる方が、思いの外興味をもってくださっていたようでした。


でも、行列で待っていただくほどの仕事をしているとは思っていませんでした。



なぜ?という私の疑問にあるお客様がfacebookでこんな書き込みをしてくださいました。


「 お忙しい中ご丁寧な対応をしていただきましてありがとうございました。おそらく私以外の方も感じているかと思いますが、お献立だけではなくお店作りや器やピカピカに磨かれた曇りのないグラス、中居さんのさりげない会話と接客態度・店主自ら厳選したお酒の説明をしてくださったこと。毎回とても心地良い時間を過ごさせていただいています。
ほろ酔い客にも丁寧で誠実な対応をしてくださり、また一見客であっても変わらぬ態度で接してくださるお店は以外と少ないのです。
何度でも伺いたい数少ない料理屋さんの一つだと思います。私には分不相応のお店ですがこれからも末長く浜松の名店として牽引して行っていただきたいです」


これは本当にありがたいお言葉です。


各店同一価格の料理やお酒で、他様と差別化ができるとしたら、この部分でしか対抗できないのです。


料理とお酒だけでなく、まつわるすべてのことに綿密に対応すること、このことこそが私の店にとっては大切なことでした。で、スタッフ全員が日々積み重ね、「これが当たり前」と思いながら、ほろ酔い祭りの企画でもお客様に接してきました。


それを感じてくださる感性をお持ちの方がひとりでもいらっしゃったとしたら、これ以上のことはありません。


料理とお酒の内容だけで店選びをしてくださっていると思い込んでいたほろ酔い祭りで、店のスタンスの一端が見えていたとしたら、毎日の精進がほんの少し身についているかも。。。と誇りにしてもいいかもしれません。ただ、それって店にとっては変わらぬこと、今回だけの行列の秘密は未だに解明できません。