久保田敬子さん逝く


静岡に「ジャンティ」という名フレンチレストランがあります。


久保田敬子さんは「ジャンティ」のサービスを長く勤めた方。


サービスのきめ細かさ スマートさ 合間に挟むユーモアは、並ぶ方がいないほどソフィスティケイトされているのですが、なにより久保田さんを久保田さんたらしめたのはチーズです。


日本にまだチーズの文化が全く定着していない頃から深くその道を究め、間違いなく日本の第一人者の一人でした。


私にチーズの熟成の扉を開けてくださったのは久保田さんです。20年近く前、チーズの衝撃的な美味しさを経験したその晩のことは今でもハッキリ思い起こせます。


当時、チーズの入手ルートがあまりなく、久保田さんに何回か質の良い熟成感のあるチーズを送っていただいてもいました。


さらに、雑誌「専門料理」で日本酒 ワインとチーズの組み合わせをさぐる企画にお声をかけていただき、私の店まで同僚ソムリエの中川さんとお越しいただいてたくさんのチーズとお酒の試飲試食を重ねました。


その久保田さんがお亡くなりになったというニュースが飛び込んできました。


改めて経歴を拝見すると、業界歴は私の方が長かったというのに、あっという間に登り詰め、他の追随を許さぬ高みで仕事をされていたのです。


彼女の死は日本のレストラン業界の大きな痛手です。


ご冥福をお祈りします。