[世の中] サイトウキネンオーケストラ


今年は夏休みらしい夏休みをとる予定もなく過ごしていた中、高校時代からの長い友人が「小澤〜サイトウキネンのチケットが取れそうだけど、行く?」と誘ってくれました。


何しろ発売10分で売り切れると聞くプラチナチケットです。快諾しました。


小澤〜サイトウキネンが聞けることもさることながら、実は高校時代の友人三人が旅を共にする35年ぶりの時間が、それ以上の楽しみでした。東京〜松本往復の列車、時を忘れて語り合うことを想像するだけで胸躍ります。


離れた場所に住んでいますから、一二年に一度くらい、バラバラに出会うことはあっても、三人が揃うのは本当に久しぶりです。小学校の遠足の100倍は楽しみ・・・といっても若い方には理解できないでしょうねぇ。





新宿発の電車に乗車する前に、シャンパンとお弁当を伊勢丹で買い込み、電車の中で語ることはといえば、共通の音楽のこと、小説のこと、自然科学のこと、ドラマのこと、ラジオのことなどなど。これほどストレスなく喋りあったことは近年なかったことに気付きました。


普段仕事に追われていると、お客様やスタッフと喋るのは常にどこかで気遣いが生じています。口にしていいことといけないこと、趣味的なお話が出たとしても全ては仕事がうまく回ることを前提に言葉を発しているのです。この年代になると定期的に友人と会う機会も極端に少なくなり、仕事しかしていない日常の連続でした。


ところが、夫婦よりも長い付き合いの友人ともなれば、利害関係はもちろん、全てを許し合い、なんでも話せるのは世の中にほとんど彼らだけではないかというほどの関係になっているのです。


往復の5時間くらいはあっという間、気づいたら音楽に感動した以上に、ストレスから解放された心地よい気分の自分がいました。


松本の会場で小澤〜サイトウキネンの演奏を聴いていた時間は正味一時間ちょっと。小澤さんの体調もあってブラームスの四番から変更になったベートーベン二番は、これ以上は考えられないほど美しい二楽章と三楽章に聴き惚れた至高のひと時でありました。


こんな短い夏休みを用意してくれた友人に感謝です。


もうこの年齢になったら、仕事の量を減らしてでも友人との時間を大切にすることも大事だなと実感した心に残る夏休みでした。