[お店] 父の時代と比べると


ありがたいことにというべきか、幸か不幸かというべきか、同級生はそろそろ引退も視野に入れている年齢なのに、私は日々忙しくしています。


修行時代にのんびりした学生生活からいきなり長時間のハードワークに叩き込まれて、「ここをこなすことができたら、これからどんな状況でもやっていけるかもしれない」と能天気に思っていたのに、実際には修行時代よりも今の方がはるかにハードワークをこなしています。三十代四十代よりも働いていることは間違いありません。


亡くなった父が私と同じ頃を思い返すと、朝九時からお昼まで仕出しの仕事をこなし、お昼から夕方の仕事の間に、料理組合の会合やらライオンズクラブの会合、町内の仕事に出かけて、夕方は刺身を引くなどの仕事が済めば八時九時くらいには、私や若い者に仕事をまかせてのんびりTVを見ていました。


朝七時には仕入れの準備をし、昼の1時間半くらいの休憩を含めて夜十二時まで仕事をしている私に比べるとなんとのんびりしていたことか。


祖父も父も、仕事をまかせて外に出て公の仕事をすることも多かったですし、海外旅行も年に一〜二回、国内旅行はさらに・・・という具合で、休日に映画や美術館、本、音楽が楽しみで、一年のうち連休をとることも稀な私よりもずっと活動的で、ゆったりと優雅でした。


そんな生活ぶりでも、店の利益率はいまよりもずっとよかったことを考えると、時代が良かったのか、ただただ私の才覚がないのか。。。


五十五歳を超えたら若い感覚についていけなくなるかも、とか、六十を越えてとんがった料理やお酒なんて無理と思い込んで戦々恐々としていたのに、昨今の風潮を考えると引退などもってのほか、時代に取り残されようが、「あいつの料理は古い」といわれようが、死ぬまで必死で働いてばったり倒れるという未来が見えてくるようで少々切なくなります。


んでも、仕事が楽しいんだけらいいかぁぁ。