新年


あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


昨年の新年は病院の集中治療室でむかえたことを思うと、今年は無事生還した事を実感する正月です。


昨年のすったもんだで、一度も休みなく続けてきたおせち料理を年末ぎりぎりに休まざるを得なくなって、たくさんのお得意様にご迷惑をおかけしました。クリスマス間近でおせちができないと言われてもまともなお店のほとんどは予約を終了していたでしょうから、予約済のおせちは当然のように出来上がると思っていたお客様はどんなに戸惑われたでしょう。


そんなご迷惑をおかけしたわけですから、「復帰できたのでおせち料理再開します」と言われたって注文を今まで通り頂けるわけがないと思いつつふたを開けてみると、注文数は病気前の一昨年とほぼ同数。


ありがたくて注文の電話をいただくたびに手を合わせ、mailを頂戴するごとに頭を下げていたのです。


お得意様の中には「ウチはもうずっとお宅のおせちだからあなたの料理でないとだめなのよぉ。よかったわねぇ、無事に戻ってこられて」とおしゃられ、電話口で涙声になってしまいそうになるのをこらえるのに必死でした。


晦日におせちを受け取りにいらしてくださったお客様も私の顔見てお声をかけてくださったり、陣中見舞(快気祝い)をくださったり、長年のお得際様に守られて商売を続けられているのだという手ごたえをこんなところでも感じた年末でした。



さて、
さすがに25日以降の仕込みに身体は疲れ切って、初めて大晦日は9時に就寝、ぐっすり眠ってさわやかな元旦を迎えました。若い時分には感じなかったことですが、疲れ切ったからだが十分な睡眠で回復するという人体の不思議をあらためて実感した新しい年らしい朝でした。


とはいっても、身体は新年を迎えても、気分はまだまだなのです。


宅配でお送りしたおせち料理が到着するのが元旦の午前(遠い地区は午後、北海道は二日午前) 正午過ぎから二時三時あたりまでは、電話がチリンとなろうものなら、心臓血管に埋め込まれたステントがはじけ飛ぶのではないかと思うほどドキドキする一年で最も心臓に悪い半日が続きます。電話は「まだ届かない」などというクレームだったりするケースがあるからです。


ラッキーなことに寒さがぶり返して雪による遅延が進み始めたのは元旦の午後を過ぎてからで、これがもし一日早まっていたら電話電話の連続であった可能性もあるかと思うと気が休まる暇はありません。


店売りだけの時代にはおせち料理を店頭でお渡しした以降は、元旦の朝の味見で大丈夫なら(食材が痛むような仕事は絶対にあってはならないのですが)安心して新年を迎えられますが、宅配を始めてからはずっと私の新年は元旦の夕方にやってくるものとなりました。


幸いなことに一本の電話もなく「届いたよ」のmail数本を眺めつつ美味しい晩酌でのどを潤すことができました。


昨年は夏休みも取らず連休もほとんどなく仕事をしてきました。正月は少しのんびり身体を休めるつもりでいます。


90周年の記念献立も年末にはたくさんのご注文をいただきました。まだ新年あけても続きますので、さらに多くのお客様のご来店をお待ちしております。


皆様の新しい年がより良い年でありますようにお祈りしつつ。