ものんくる


料理であれば、最初の前菜を見ただけで店の善し悪しは大概判断できるように、音楽も最初のワンコーラスを聴けば、長く聴き続けるミュージシャンであるかどうかは大概判断できるつもりでいました。


実際、CDでもファーストインプレッションがピンとこないと、何年か後に聴き直してもやはり心を揺さぶられないのです。優れたミュージシャンであれば四小節で実力はわかるつもりであったのです。


ところが、痛恨でありました。


ものんくる


菊池成孔さんのラジオ番組でファーストアルバムを聴き、net上でも耳にして、「まっ、CDを購入するほどではないかな?」と判断してしまっていたのです。


先日、セカンドアルバムが出るということで、再び菊池さんの「粋な夜電波」に出演し、アルバムの中の数曲を聴いて驚きました。


なんという素晴らしい音群。


ファーストアルバムがたいしたことなくて、セカンドアルバムがいいというレベルのお話ではなくて、グループ自体の音そのものが強烈なのです。


この凄さを見過ごしていたとは。。。


慌ててファーストアルバム「ものんくる〜飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち」を手に入れて聴き始めるとそれはもう別世界でした。


飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち

飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち


その音楽はいわばジャズポップスとでもいうようなもの。


作詞/作編曲の角田隆太の優れた創作性。ほかのどこにも存在しない新しい音。メンバー全員の共通言語であるジャズをベースにみずみずしい感性に彩られたポップス感。ボーカル吉田沙良のあどけなさを含んだイントロダクションから次第に演劇を紡ぎ出すように高らかに歌い上げる歌唱能力。瀬田創太(p)、西村匠平(ds)、小林豊美(fl)、石川広行(tp,flh)、平山順子(as,fl)、上杉 優(tb)全員がアンサンブルでもソロでもセンスのいい演奏を繰り広げるのです。しかし、この録音の化粧っ気のなさはなんでしょう。しかもそのすっぴん感が各演奏者の驚きの実力をそのまま現しています。厚化粧が当たり前で、素顔が見えない昨今の音楽事情をあざ笑うかのような試みはジャズファンにはたまりません。


プロデュースをした菊池成孔さんは20代半ばにして独自の音楽性を築き上げて行く様を「アンファン・テリブル(恐るべき子供)」「彼らを世に出さずに何をすれば良いのか」と賞賛しました。


まことに恐るべき20代なのです。


新しい感性に震えたい方は是非聴くべき


「南へ」
もね

南へ

南へ