映画「二郎は寿司の夢を見る」


映画「二郎は寿司の夢を見る」を見てきました。職人にとっては必視の映画。


料理業界の中での「すきや橋次郎」さんの有り様は、有名になればなるほど賛否が様々渦巻くことは仕方のないことではあるのですが、どんな非難も、店が店として成り立ち、繁盛し継続しているという事実の前ではひとたまりもありません。


この不景気の中、素材にだけ目を向けて値段は後からついてくる(というだけではないはずですが)という店の姿勢は、高級店のお客様が減っていく中で客単価を下げざるをえない多くの店の中で、妬みを通り越して羨望とあこがれの目で見られてもおかしくはありません。


映画自体は、日本では定番化している「プロフェッショナルの流儀」風 「情熱大陸」風を見慣れている目で見ると目新しく感じられるドキュメントの手法ではありませんが、わかりやすい事件を主題にせずに人物を丹念に一人一人描いているのはかなり好感がもてます。


それにしても、ご主人の二郎さん、85歳現役(撮影当時)です。私の父と同じ世代。65歳でなんとか引退を考えているひ弱な私からさらに二十年も現役を続ける・・・・十年前の私なら「そんなのいや」「ありえない」「仕事だけが人生じゃぁない」と思ったはずです。しかしながら、職人の突先の仕事を85歳の時点でも維持できる突出した能力を持てるのであれば、よたよたでもやってみる価値はあるかも・・・などと、簡単に日和ってしまうほどの存在感が二郎さんにはあります。55歳を過ぎたら守りの仕事、進化のとまった仕事になるに違いないと、周りの多くの職人たちを眺めて恐れていた私の希望の星といえるかもしれません。


65歳を過ぎたら週四日くらいの楽な仕事でのんびりと。。。なんていう妄想を抱いているようでは、二郎さんの足下にも及ばないのでしょうねぇ。